2011年の日経平均は17%下落、円高は対ドルで5%進行

2011年の日経平均株価は年間で17.3%下落した。

東日本大震災や欧州債務危機でリスク回避の動きが強まり、
国債など「安全資産」への資金逃避が加速。
10年国債利回りは1%を割り込んだ。

対ドルで4.8%、対ユーロで6.9%
円高が進んだことも輸出株を圧迫。

ソニーが24年ぶりの安値水準となるなど
日本の主力株の落ち込みも目立った。

昨年末時点では今年ドル高・円安が進むとの予想が多かったが、
欧州債務問題が拡大し、景気回復期待が失速するとリスクオフが進行。
「安全資産」の円が買われ、戦後最高値を更新した。

また10月には一時的なリスクオフの後退もあったが、
ドル安が進んだため円は対ドルで再び高値を更新。
一時75円31銭まで円高が進んだ。

政府は度重なる円売り介入を実施。

10月には7兆円半ばから8兆円規模とみられる
過去最大規模の介入を実施したほか、その後も1兆円規模で
「覆面介入」を行ったとの見方が多い。

急速な円高進行はいったん止まっているが、
ドル/円は依然として80円割れの水準に
とどまっているほか、ユーロ/円は100円割れ寸前まで下落し、
10年半ぶりの低水準となっている。

円高に欧州債務危機が加わり、
日経平均は2年連続の下落。

リーマン・ショックがあった
2008年の42.12%以来の下落率となった。

世界的な景気回復期待と円安期待で2月17日に
1万0891円60銭の年初来高値を付けたが、
東日本大震災で株価が急落。

売られ過ぎの反動でいったん1万円を回復したものの、
欧州債務問題などの深刻化でグローバルなリスク資産売却の動きが
再び加速し、11月25日には8135円79銭の年初来安値を付けた。
その後も反発力は弱く、8500円を割り込んで1年を終えた。

ソニーパナソニックなどの株価が歴史的な水準に落ち込んでおり、
「日本経済を支える企業の世界における存在感の低下」
(大手証券ストラテジスト)の表れであるとして、
悲観的な見方を示す向きも多い。

ただ、大きく下落したのは日本株だけではない。

29日時点の海外株をみると、堅調な米経済を背景に、
米ダウが年間で6%上昇と群を抜いたパフォーマンスを
示しているが、ソブリン問題の震源地である
欧州の主要株価指数をみると、英国は5%と
比較的下落率が低いものの、ドイツは15%下落、
フランスは17%下落と大きく下げた。

債務懸念が強まったイタリアは26%安、
ギリシャは52%安だ。

アジアでも景気減速懸念が強まっており、
上海株は22%下落、香港も19%下落、
韓国株が約11%下落している。

2011年の金融市場の流行語ともなった「リスクオフ」が
世界的に進む中、日本の10年国債利回りは景気回復予想が
一時的に強まった2月に1.35%まで上昇したものの、
その後はほぼ一貫して下がり続け、11月には0.940%まで低下した。

ボラティリティも極めて小さかったが、
海外でソブリン問題がクローズアップされるなか、
ドイツ国債の札割れショックが日本国債に波及し、
金利が上昇する局面もあった。

震災の影響もあり、2011年年間で
日本は貿易赤字となる見込みだ。

巨額な所得収支があるものの、日本国債を支えてきた
マネー構造にも変化の兆しが見えている。

一方で、社会保障改革や税制の
抜本的な見直しは一向に進んでいない。

財政の余裕は毎年小さくなっており、
低いボラティリティ状況が来年も続くかは不透明だ。

株式だけでなく、金などのコモディティからも
年後半は資金流出が加速した。

昨年末にオンス当たり1419ドルだった金現物は
9月6日の1920ドルでピークアウトし、
現在は1600ドルを割り込んできている。

原油など19商品の先物相場で構成される
ロイター/ジェフリーズCRB指数終値は、
昨年末の水準を約8%下回っている。

こうしたリスクオフの背景には、リーマン・ショックを機に
金融規制が世界的に強まっていることから、レバレッジをかけた
投資が行いにくくなっていることもあるとみられている。

一方、2011年の相場で意外感があったのは、
ユーロの下落が限定的だったことだ。

欧州債務問題が今年もマーケットを揺るがしたが、
ユーロ/ドルは年間で約3%の下落にとどまっている。

ユーロ圏の経常赤字は年間800億ユーロ程度であり、
域内総生産(GDP)の0.6%程度と全体的な
ファンダメンタルズでは健全性を保っていることが、
ユーロが底堅かった理由の1つだとみられている。

来年は欧州の景気減速が予想されているが、
ある程度相場に織り込まれたとの見方もある。

欧州のソブリン問題は構造問題であり、解決までには
時間が必要だが、ユーロ圏がある程度安定を取り戻せば、
市場センチメントの改善も期待できる。

これまでの株価下落で配当利回りなどからみた
株式の割安感は強まっており、一時的なリバウンド局面の
到来を予想する声も少なくない。