欧州債務、2030年まで制御可能な水準に低下せず=世銀報告

世界銀行は24日、欧州経済について、差し迫ったリセッション
(景気後退)が緩やかにとどまっても、強い回復を遂げる可能性は
ほとんどなく、先行きも成長は弱いとの見通しを示した。

世銀は報告書で、欧州の成長は、2030年まで制御可能な水準に
減少しないとみられる債務によって圧迫されるとしている。

高齢化による労働人口の縮小、債務が拡大し歳出負担によって
将来の見通しが立たなくなるという悪循環から欧州を救うには、
政府や労働慣行で大きな改革を実施していくしかないと指摘。

「力強い成長は債務問題を解消する可能性があるが、経済が強く上向く
見通しはわずか」とし、家計と政府が債務を削減し投資家の警戒感が続くなか、
2016年まで生産は弱いとの見通しを示した。

欧州連合EU)は、投資家の信頼回復と債務危機の回避に向け、
財政赤字の削減に注力しているものの、非常に大きな課題であり、
西欧諸国は2030年まで財政赤字を対国内総生産GDP)比60%という
危機前の水準に戻せない可能性が高いとしている。

EUデータによると、ユーロ圏17カ国のうち、2012年に
EU規定の債務上限内に財政赤字が収まるのは、エストニア
フィンランドルクセンブルクスロバキアスロベニアのみとみられる。

世銀のPhilippe Le Houerou欧州・中央アジア担当副総裁は
「成長なくして危機は解決しない」と言明した。

報告書は、政府の規模が10%ポイント拡大すると、欧州先進国の
長期成長率は約33%低下するとし、欧州各国政府は規模を縮小し、
効率化を図る必要があるとの認識を示した。

また、より大きな問題として、向こう50年間に、欧州の労働人口
5000万人減少すると予想され、自律的な成長維持が困難になる恐れがあると指摘。

失業率が高い時には難しい課題であるものの、
移民によって労働力が補完できるとしている。

また、世界的にみても手厚い西欧諸国の年金制度について、
年金支給額が労働者の所得水準に追いついていないとし、
早期退職しにくい環境を作っていくことが求められるとした。