欧州次第で世界的景気後退に、市場安定確保に全力=日銀議事要旨

日銀が27日に発表した12月20〜21日開催の
金融政策決定会合の議事要旨によると、会合では
最大のリスク要因と位置づけている欧州ソブリン問題について
活発な議論が行われ、今後の展開次第では、欧州経済が大きく下振れ、
世界的な景気後退の引き金になり得るとの危機感が
政策委員で共有されていたことが明らかになった。

欧州問題で金融市場の動揺が強まることも念頭に置き、
市場安定に全力をあげていく構えが必要との認識で委員が一致した。

会合では、欧州金融機関の資金調達環境について、
日米欧の6中央銀行によるドル資金供給オペの拡充や、
欧州中銀(ECB)による3年物オペを受け、「資金繰りへの
不安感はいく分後退した」との認識で一致。

一方で、引き続き、欧州問題に対する懸念が強い状況に
あることも確認され、「欧州ソブリン問題を解決する即効薬はなく、
市場の緊張状態が長期間続く可能性が高い」との見方で一致した。

欧州の金融機関は今年6月末までに9%の自己資本比率
達成する必要があることから、複数の委員が、欧州金融機関による
資産圧縮の動きが加速する可能性に言及。

新興国・資源国の一部では、そうした資産圧縮による
影響がみられていると指摘した。

世界経済は、欧州問題などを受けて減速しているとの認識で
一致するとともに、欧州問題の展開次第では「金融システムの
不安定化などを通じて、欧州経済が大きく下振れる可能性があり、
欧州経済のさらなる落ち込みは、世界的な景気後退の
引き金になり得る」との危機感が共有された。

米国経済については、複数の委員が、市場において
一時の悲観的な見方が後退しているとしたが、
リーマン・ショック以降、悲観と楽観を
短期間に繰り返していることを踏まえると、
見方が再び修正されることはないか、
丹念に点検していく必要がある」とした。

こうした情勢を踏まえた日本経済の認識では、
複数の委員が欧州問題の影響について
「直接・間接の貿易面のルートを通じて、
すでに日本の輸出・生産にも及び始めている」と指摘。

何人かの委員は、昨年10月に公表した
「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の想定に比べ、
「海外経済の減速の度合いはいく分強く、復興需要の
顕現化の時期もやや後ずれしている」との見解を示した。

先行きの日本経済は当面横ばい圏内の動きが想定されるが、
新興国を中心とした世界経済の成長の高まりや、
東日本大震災からの復興需要などを背景に、
その後は緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有。

もっとも、海外経済金融情勢をめぐる不確実性は依然として高く、
今年前半に欧州の財政懸念国の国債や金融機関の社債の借り換えが
本格化することなどから、市場の緊張感が
一段と高まる可能性があるとの見方で一致。

日本固有のリスクとして、何人かの委員は
「電力供給の不確実性や復興関連予算の執行の遅れ」を指摘した。

金融政策運営では、複数の委員が、欧州問題の深刻化による
金融市場の動揺が強まることも念頭に置き、「引き続き、
金融市場の安定確保に全力を挙げていく構えが必要」と発言。

資産買入基金による金融資産の買い入れを着実に進め、
効果の波及を確認していくことが適当との認識が共有された。

内閣府からの出席者は、日銀に対して「景気下振れの回避に加え、
デフレ脱却に向け、適切かつ果断な金融政策運営」を要請した。