2011年の経常黒字は過去最大の減少、1月上中旬の貿易赤字も過去最悪

2011年の経常黒字は前年比43.9%減の9兆6289億円となり、
1996年以来15年ぶりに10兆円台を割り込んだ。
減少率は現行統計が始まった1985年以来最大。

所得収支は4年ぶりに黒字幅拡大が拡大したが、
貿易・サービス収支が1985年以降で
初の赤字に転落したことが響いた。

織り込み済みとして市場の反応は鈍いが、
1月上中旬の貿易赤字は過去最大の1兆5600億円に拡大。

経常黒字の縮小は国債や円に
大きな影響を与えるため警戒感は強い。

経常収支では、海外輸送の保険や
輸送費用などの扱いが貿易統計と異なる。

貿易統計では赤字転落は31年ぶりだったが、
経常収支では旧来の算出基準までさかのぼると
1963年以来48年ぶりの貿易赤字(1兆6089億円)となった。

東日本大震災の影響などから輸出が62兆7234億円と
前年比1.9%減少した一方、原子力発電所の運転停止などで
輸入量が増加した燃料の価格上昇などを背景に、
輸入は64兆3323億円と同15.0%増加。
輸入額は過去3位を記録した。

サービス収支は1兆6407億円の赤字で、
4年ぶりに赤字幅が拡大した。

震災の影響で訪日外国人旅行者数が
前年に比べて3割近く減少したことが主因だ。

貿易収支とサービス収支を合わせた貿易・サービス収支は
3兆2496億円の赤字と、85年の統計開始以来初めて赤字となった。

一方、所得収支は前年比19.7%増の
14兆0296億円の黒字に増加。

個人投資家らが証券投資で得た配当金など証券投資収益が増え、
黒字幅は4年ぶりに拡大し現行統計で過去3位の高水準となった。

対外投資からの所得収支は順調に拡大し、毎月1兆円超の黒字を
稼いでいるが、それ以上に貿易赤字が拡大していることで
経常黒字が縮小している構図だ。

今年に入ってもこの傾向は続いており、1月上中旬の貿易収支は
1兆5600億円の赤字と比較可能な1990年以降で、最大となった。

季節的な特殊要因はあるものの、
1月は経常赤字に転落するとの見方も出ている。

円高が続けば所得収支の黒字にも
下押し圧力がかかるため、警戒感が高まっている。

財務省では今後、所得収支は一定の黒字基調が
見込めるとしながらも、貿易収支の赤字転落は、
震災以外にも海外景気減速の影響など
一時的ではない要因もあると指摘。

経常収支がすぐに赤字となることは考えづらいが、
黒字幅の推移は弱含みが続きそうだとしている。