デフレ脱却は「最重要」、原油高などにも目配り=森本日銀審議委員

日銀の森本宜久審議委員は22日、神戸での講演で
「デフレから脱却し物価安定のもとでの持続的成長経路に
復すことが最重要課題」としつつ、原油急騰の可能性などに
目配りする必要性について随所で指摘。

強力な金融緩和を進める方針である一方、金融緩和が
引き起こすインフレリスクや、長期金利の上昇リスクにも
目配りしている印象を与えた。

森本委員は講演後の記者会見でも、現在の原油価格上昇は
地政学リスクに金融緩和も影響している」、原油価格の上昇が
「日本経済の下押しに大きな影響与えるのは間違いない」と述べ、
日本を含めた先進国による金融緩和が商品市況を通じ
自国に悪影響を与えうる点を指摘した。

また2月に日銀が初めて打ち出した事実上の
インフレ目標である「物価安定の目途」とされる
物価上昇率(1%)が低すぎるとの批判に対して、
「国民の物価観から離れ一気にこれまで
あまり経験していない物価上昇率を目指そうとすれば
家計や企業は、却って大きな不確実性に直面し、
長期金利の上昇を招く恐れもないわけではない」と反論。

高めの物価上昇率を目標に掲げることで
デフレ脱却を急ぐことの副作用を警戒した。

日銀は現在の基金による包括緩和政策を打ち出した
2010年10月以降、デフレ脱却のため強力な金融緩和を
進めると同時にバブル発生など金融面での不均衡の芽を摘む
意思も示し続けており、日銀の政策運営姿勢に基本的な変化はない。

しかし、欧州中央銀行による大量の流動性供給で
欧州ソブリン問題の緊張度がやや緩み、仮に世界経済が
順調に回復経路をたどるのであれば、リーマンショック後の
危機対応として先進国が進めてきた金融緩和が
商品市況の高騰をもたらし、物価を上昇させる可能性がある。

実際、ブラジルのルセフ大統領は今月はじめ
先進国の金融緩和について「不公平な競争条件を
作り出す為替政策であり、マネーの津波」と批判した。

日銀は2月の「目途」導入と追加緩和でデフレ脱却に向け
一段と強力な金融緩和を進める姿勢を示したばかりだが、
今後の具体的な政策運営では極めて絶妙なバランス感覚が
求められることになりそうだ。