金融面の不均衡みられず、金利1%上昇で銀行保有債券に損失6.4兆円=日銀

日銀は19日、金融システムレポートを公表し、
日本の金融システムは全体として安定を維持しており、
金融面の不均衡も生じていないとの見解を示した。

ただ、日本の政府債務残高が拡大を続ける中で、
「金融機関が多額の国債保有していることには
留意が必要」と指摘。

全年限の金利が1%ポイント上昇した場合の
保有債券の損失額は、2011年12月末時点で
大手行が3.4兆円、地域銀行で3.0兆円になると試算した。

日銀では、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して
強力に金融緩和を推進していく方針を示しているが、
その際、「金融面での不均衡の蓄積を含めた
リスク要因を点検し、問題が生じていないことを
条件とする」としており、そうした金融面での
不均衡を金融システムレポートにおいて点検する。

今回のレポートでは、金融面での不均衡について
「期待の強気化に起因した不均衡の存在を示唆する
指標は観察されない」と結論づけた。

信用リスクや市場リスクなどを合わせたリスク量は、
全体として銀行自己資本の基本的項目(Tier1) の
範囲内に収まっており、Tier1に対する
リスク量も減少傾向が続いている。

このうち信用リスクについては、企業倒産の減少や
貸出条件緩和債権の要件見直しなどにより、
銀行の信用コスト率は低下しているが、中小企業の
財務状況は悪化した状態にあるとし、「貸出債権の質に
大きな改善は見られていない」としている。

一方、市場リスクに関しては、欧州債務問題の小康などで
足元の国際金融資本市場は落ち着きを取り戻しているものの、
先行き不透明感が引き続き強い状況に変化はなく、
株式・債券市場ともに欧米市場との連動性が高まる中、
「今後も海外市場の動向からの影響には
注意しておく必要がある」と指摘。

特に、預金流入に伴って銀行が債券投資を増加させており、
「銀行の金利リスク量は増加している」。

大手行では、金利リスクを抑制するため、保有債券の
平均残存年限を2年半程度に短期化させているが、
長期ゾーンへの投資が多い地域銀行は4年程度。

仮に全年限にわたって国内金利
同時に1%ポイント上昇した場合、
2011年12月時点で、保有債券の時価損失額は
大手行3.4兆円、地域銀行3.0兆円となる。

それでもTier1比率の押し下げ幅は、
大手行で0.3%ポイント程度、
地域銀行で0.4%ポイント程度にとどまる。

しかし、地域銀行のうち3割以上が
1%ポイントを超える押し下げになるとしている。