英中銀が中期インフレ予想を下方修正、追加策実施の可能性示唆

イングランド銀行(英中央銀行)は16日発表した
四半期インフレ報告で、深刻化している
ユーロ圏債務危機が英国の景気回復に対する
リスクとなっているとし、短期的な
インフレ見通しを上方修正した。

ただ、中銀は中期インフレ見通しを予想外に下方修正。

追加刺激策が直ちに実施される公算は小さいものの、
状況が悪化した際は実施する可能性があることが示された。

中銀は英国のインフレ率が少なくとも今後1年間は
2%の目標を上回って推移するとの見通しを示した。

一方、向こう2年間のインフレ率は約1.6%になるとし、
2月の前回報告で示した見通しの1.8%から下方修正した。

経済成長率については、現時点では2.7%近辺に
回復しているとの見方を示し、前回見通しから
約0.3%ポイント下方修正した。

インフレ高進に加え、信用ひっ迫と
公的支出削減が圧迫要因になるとしている。

キング中銀総裁は記者会見で、「嵐がいつ終わるのかは
わからないが、成長が回復し、インフレが低下すると
信じる正当な理由がある」としながらも、「われわれは、
世界的な金融危機、1930年代以来の大幅な世界的な生産減、
国史上で最悪の銀行危機、平時で最悪の財政赤字
経験してきた。そして、英国の最大の貿易相手である
ユーロ圏は、明確な解決策を見出せないまま、
分裂しつつある」と述べ、この先の
困難な道のりに対して警告した。

その上で「こうした状況を安寧に乗り切ることができ、
経済成長率が長期平均に近い水準で推移し、インフレ率が
2%となるとの考えは、完全に非現実的だ。われわれは必然的に、
こうした状況に打ちのめされ、影響を受ける」と述べた。

エコノミストの間では、英中銀は
追加量的緩和の実施には消極的との見方が大勢だ。

ただ、キング総裁は、追加刺激策の実施は
依然として選択肢の1つとの考えを表明。

アナリストからは、中銀が予想外に向こう2年間の
インフレ見通しを引き下げたことは、必要があれば
追加策を実施する構えであることを
示しているとの見方も出ている。

中銀のインフレ報告を受け、ポンドはドルに対して
4週間ぶりの安値に下落、対ユーロでも下落した。

また成長見通し引き下げや追加緩和実施の可能性が
示唆されたことを受け、英10年物国債利回り
1.824%に低下し、過去最低を更新した。