金融政策はあくまで持続成長復帰が目的=日銀会合議事要旨

日銀が28日に発表した4月27日開催の金融政策決定会合
議事要旨によると、同日の会合では、先行きの金融政策運営について
何人かの委員が、市場で日銀の金融政策に対する様々な思惑が
見られるとし、「金融政策は、あくまでも物価安定の下での
持続的な経済成長の実現という目的に照らして
運営していく必要がある」と発言していたことが明らかになった。

また、一部に消費者物価(CPI)の前年比上昇率1%が
見通せるまで、日銀が機械的に資産買入基金の増額を
続けていくとの誤解があると指摘した。

日銀は同日の会合で、資産買入基金による長期国債の買い入れを
10兆円増額する一方、札割れが頻発している6カ月物固定金利オペを
5兆円減額し、基金の規模を5兆円増の70兆円に
拡大するなどの追加緩和措置を決定した。

議事要旨によると、追加緩和の理由として、日本経済は
物価安定の下で持続的な成長経路に復帰するがい然性が高いが、
「依然として様々な不確実性がある」ことから、「そうした見通しを
より確かなものとするため、経済・物価に見られている回復への
動きをしっかりと支えていくことが適当との認識で
(政策委員会メンバーが)一致した」という。

こうした追加緩和は「これまでの累積的な効果と併せて、
日本経済が物価安定の下での持続的成長経路へ復することを、
さらに確実にすることにつながる」との認識を共有。

日銀の国債買い入れ額が多額となっていることから、
追加緩和に際し、「日銀の強力な金融緩和が財政ファイナンス
誤解されることのないよう、細心の注意を払う必要がある」と
複数の委員が指摘している。

具体的な緩和策では、札割れが相次いでいる固定金利オペを
5兆円減額し、「長期国債の買い入れに振り替えることが適当」
との認識を共有。

振替分も踏まえ、「長期国債の買い入れ額については、
全体で10兆円程度、思い切って増額することが適当」
との見解で一致した。

また、会合では購入する長期国債社債の残存期間を
「1年以上3年以下」に1年長期化したが、会合では、
2年までの金利が極めて低い水準に低下している中、
年限長期化で「多額の長期国債社債の買い入れを円滑に進め、
長めの金利に効果的に働きかけていく」ことが適当との考えを共有した。

先行きの金融政策運営では、「中長期的な物価安定の目途」に基づいて、
CPIの前年比上昇率1%が見通せるまで実質的なゼロ金利政策
金融資産の買い入れなどによって、「強力に金融緩和を
推進していく」方針を確認した。

こうした中、何人かの委員は、市場で日銀の金融政策に対する
様々な思惑が見られるとし、「金融政策は、あくまでも、
物価安定の下での持続的な経済成長の実現という目的に照らして、
運営していく必要がある」として過度な緩和期待をけん制。

また、議事要旨では、「消費者物価の前年比上昇率1%が
見通せるまでは、機械的基金の増額を続けていくという
誤解が一部に見られる」とし、金融政策の効果波及の
タイムラグを踏まえ、日本経済の見通しとリスク要因という
「2つの柱による点検をしっかりと行った上で金融政策の
運営方針を決定しているということを、丁寧に説明していく
必要がある」との見解で委員が一致した。

追加緩和の決定を受け、財務省からの出席者は「政府の取り組みと
連携の取れたデフレ脱却に資する対応として、高く評価する」と発言。

その上で「引き続き、積極的かつ果断な金融政策運営に
取り組んでいただきたい」としている。

同日の会合では、向こう2、3年間の経済・物価見通しを示した
「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)も議論。

同リポートでは、2013年度のCPI見通しをプラス0.7%に上方修正し、
その後に当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず
達する可能性が高いとの見解を示した。

会合では、CPIの上方修正について「経済見通しの
上方修正に伴うマクロ的な需給バランスの改善に加え、
為替円高の修正や原油価格上昇の影響によるもの」との認識を共有。

輸入物価の動向について、複数の委員が「中国における
賃金上昇の動きが、輸入物価の上昇を通じて日本の物価の
上昇圧力となる可能性がある」と指摘した。

また、経済のリスク要因に関して複数の委員が、
今夏の電力供給が生産活動の制約となる
可能性についても注意を促している。

足元で再び再燃への懸念が強まっている欧州債務問題については
「金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは、
一頃よりも低下している」との認識で一致。

もっとも、ギリシャの総選挙やフランスの大統領選などを控え、
「欧州政治情勢をめぐる不透明感が強いこともあり、
当面の市場動向については、注意深くみていく必要ある」
との見方を共有した。