野田・小沢会談は物別れ、消費増税法案で協力得られず

野田佳彦首相は30日午前11時から民主党本部で
小沢一郎元代表と会談し、消費増税法案への協力を要請した。

しかし小沢氏は増税前に地域主権を目指した行政改革
社会保障の理念の実現、日本経済の再生などが必要だと主張、
法案への対応で合意を得ることはできなかった。

2回目以降の会談は決まっておらず、
今国会の会期末まで1カ月を切るなか、
法案成立への道筋は一段と不透明さを増している。

野田首相が小沢氏と会談するのは、
昨年9月に就任して以来、初めてのこと。
会談には輿石東幹事長が同席した。

首相は消費増税関連法案の今国会での
成立へ向け、小沢氏に協力を呼びかけた。

これに対して小沢氏は「消費増税の前に政権として
やることがあるというのが、国民の気持ちではないか」と反論、
具体的には1)中央集権の官僚支配から地域主権地方分権
仕組みに日本の行政社会を変えること、2)年金制度大改革など
社会保障のビジョンの実現、3)日本経済の再生が
成し遂げられない状況で消費税を引き上げることは
納得できないとの持論を展開し、
法案への賛成は得られなかった。

小沢氏は会談後、「大増税の前にやるべきことをやるのが、
民主党政権の責任だ」と首相に伝えたことを明らかにした。

今後については「(首相と)一致点を見出せるかはわからない」
としながらも「(民主党の)代表(である首相)から呼ばれれば、
行かねばならないとの認識だ」と述べ、首相から要請があれば
再会談に応じる考えを示している。

しかし、野田首相は「(小沢氏が)どういう問題意識を
持っているかはよくわかった」と語ったが、協力を
要請するためにさらに会談を行うかとの質問には
「きょうはかなり率直な天下国家の議論ができた。
そのことをもう1回反すうしながらどうするか
考えたい」と述べるにとどめた。

会談に同席した輿石幹事長も再会談について
「必要ならやるし、必要なければやらない」
との認識を示しており、再会談が実現するかは不透明だ。

これに対して自民党石原伸晃幹事長は「予想した通り
何もない。首相は本当にやる気があるのか。率直に
意見交換している場合ではない」と批判している。

小沢氏の賛成を得られなかった首相だが、法案成立に
向けて残された今国会の会期は3週間しかない。

法案を修正する中で賛成を求めていくか、
との質問に首相は「基本的には会期があるし、
国会審議が進む中で、今国会中に採決しなければならない
という日程感の話はした」として「基本的な
そのスケジュール感のなかでどう判断するかだ」と語った。

また、賛成を得られなくても衆議院で採決を
するかとの質問には「今日の段階では、率直な
意見交換ができた。基本的には賛成いただきたい」
と答えるにとどめた。

輿石幹事長は「時期が来れば採決することになるだろう」
との見方を示し、この日の会談は党内が一致結束して
採決に向かうための「第一歩だった」と指摘。

「内(うち)を固めるための会談だった」と説明した。

輿石幹事長によると、会談では
衆院解散は「話題にはなっていない」。

野党から、野党協力を求める前に「小沢切り」だ
との声があがっていることに関しても、「党内で
誰が小沢元代表を切ろうと言っているのか。
そのようなことが話題になるわけがない」とはねつけた。

野田首相も「できるだけ多くの同志が結束して、
野党と向き合って議論して成案得るというのが基本だ」と述べた。

消費増税法案をめぐっては、ねじれ国会の下で
野党の協力なしに成立は望めない状況にある。

小沢元代表グループが反対に回れば、衆院でも
否決される可能性がある。衆議院で否決となれば、
政治生命をかけるとしている野田首相は退陣を
余儀なくされるため、否決の見通しとなった段階で、
造反する議員を除名して、解散に打って出る
可能性もあるとされる。

ただ、民主党仙谷由人政調会長代行は30日午後の
テレビ番組で「ギリシャ問題もあり、(解散を)
今やったらまずいという雰囲気が強くなっている」と指摘。

「消費税引き上げの是非をめぐって総選挙になるのは
まずいという雰囲気が、自民党の議員も含めて
強まっている」との見方を示している。

自民党などの野党は、首相が小沢氏など民主党内の
反対派と決別すれば法案に協力できる、という姿勢を示している。

小沢氏がたとえ消費増税関連法案の賛成に回っても、
自民党などの野党が反発すれば、参議院での可決は難しくなる。

逆に、小沢氏との話し合いで最後まで協力が得られず、
首相が野党との協力に活路を見出そうとすれば、
法案成立の芽が出てくる構図だ。

ただ現時点では「(民主党から)協力してくれという
雰囲気ではない。国会で審議していくしかない」
(石原自民幹事長)という状況だ。
6月21日の会期末まで3週間。

会期を延長するにしても、首相が20カ国・地域(G20
首脳会議に出席する前の6月半ばまでが正念場となる。