悪い形での金利上昇は日本経済に大きな影響=白川日銀総裁

日銀の白川方明総裁は、25日午前の参議院社会保障
税一体改革特別委員会で、財政への信認が低下し、
長期金利だけが上がる悪い形での金利上昇は、
日本経済と金融に大きな影響を与えるとし、
長期金利が安定的に形成されることが大事であり、
国債市場に十分注意しながら適切に政策運営したいと語った。
大久保勉委員(民主)の質問に答えた。

白川総裁は「今年3月末の銀行の自己資本
大手12行で37.1兆円、地銀、第2地銀など
地域銀行全体で17.3兆円」とした上で、
長期金利が仮に2%上がった場合の
保有債券価格下落幅は「大手行で7.3兆円、地域銀行
6.0兆円という計算になる」と説明した。

その上で、こうした金利上昇が経済に与える影響に関しては
「どのような状況の下で長期金利の上昇が起きるかに依存する」とし、
「仮に財政の信認が低下し、長期金利だけ上がると日本の経済金融に
大きな影響を与える」と指摘。

そのルートとして「(金融機関の)自己資本が減り、
貸し出しがしにくくなり、実体経済に影響を与える」
と説明した。

白川総裁は、日銀の金融政策と長期金利の関係について、
現在の包括緩和の枠組みで国債などを大量に買い入れていることを
説明した上で、「国債市場が中銀の買い入れにかなり依存する
市場になると一時的には長期金利は下がるが、何らかのきっかけで
反転上昇することも起こり得る」と指摘。

「その場合には金融機関への影響も起こり得るので、
金融政策運営にあたっては、金融システム全体の安定と
経済の安定を損なわないよう適切な金融政策を行っていく
必要がある。国債市場がどのように展開していくか
十分注意しながら適切に政策運営したい」と語った。

また財務省は残存期間5年以上の国債の利回りが
一律で変化するという前提で、長期金利が2%上昇した際の
影響について、時価総額が約19.7%下落するとの試算を示した。

残存5年以上の中長期国債残高は24日現在、額面で312兆円、
時価で338兆円あり、19.7%の下落を適用すると時価総額
66.7兆円減る計算となる。

安住淳財務相は「時価会計の導入により、国債の評価損益が
銀行などの決算に大きな影響を与えるということを踏まえれば、
国債市場については、より一層の注意を払う必要があると
考えている」と語った。