IMFが世界成長見通し下方修正へ、欧州の不透明感で=専務理事

国際通貨基金IMF)のラガルド専務理事は24日、
IMFが来月公表する世界経済見通し(WEO)で
世界の成長率予想を下方修正するとの見通しを示した。

欧州当局者がユーロ圏危機の解決に向けた合意を
実行するか不透明な情勢となっていることが
信頼感を圧迫しているとした。

10月に東京で開かれるIMF世界銀行年次総会に
関するスピーチで明らかにした。

専務理事は「IMFは引き続き緩やかな回復を予想しているが、
世界経済の成長は7月の予想よりもやや弱くなる見通しだ。
IMFの予想は過去12カ月にわたり下向きの傾向を
たどってきた」と述べた。

IMFは7月に公表した世界経済見通しで、
2013年の世界経済の成長率予想をプラス3.9%に
引き下げたが、2012年については
プラス3.5%で据え置いた。

専務理事はまた、ユーロ圏債務危機を取り巻く
不透明感が世界経済の最大のリスクとした一方、
減税失効と歳出の自動削減開始が重なる米国の
「財政の崖」問題も「深刻な」リスクとの見方を示した。

先進国当局者がこれらの主要な問題に効果的に
対処するかどうかをめぐる不透明感が他の地域にも
波及しているとし、このところ新興国でも明らかに
景気が減速していると指摘。

貧困国の食料価格上昇や不安定な商品(コモディティー)
価格に加え、中東の政治変動に絡む不満の拡大も
「大きな懸念事項」になっていると述べた。

債務危機の解決に向けた最近の欧州の決定を
金融市場は好感しており、当局者が今後これを
実行に移すことを期待していると強調。

「市場がポジティブに反応しても短命に終わることは
過去にもあった」とし、「今回は一時的な反発ではなく
持続的な回復が必要だ」と述べた。

ユーロ圏の重債務国にとって構造改革と財政健全化は
不可避とした上で、ポルトガルやスペインといった国に
財政分野などの改革を実行する時間的猶予を
与えることに支持を表明した。

欧州「銀行同盟」構築の必要性も改めて強調し、
「銀行とソブリンの間の悪循環を断ち切るため、
できるだけ早期に実現すべき」との考えを示した。

ただ、時間がかかることは承知しているとも述べた。

新興国については、経済を下支えするため
金融・財政引き締めを休止するか、もしくは中国のように
刺激策を講じる必要がある国も一部見られると指摘。

その他の国は高水準の信用の伸びが金融安定を
脅かさないよう注視することが重要だとした。

中国による成長促進に向けた対策は、短期的には
一定の支えとなるものの、長い目で見れば内需
国内消費の拡大が欠かせないとの考えを示した。

講演後の質疑応答で「中国の対応は正しい方向に
向かっていると思う」とする一方、「中期的には、
輸出ではなく国内市場の伸びによる、消費に一段と
軸足を置いた成長モデルを描くことがとりわけ
今後の新指導部に求められる課題となる」と語った。