日銀が追加緩和見送り、中国減速で景気は踊り場入り

日銀は5日の金融政策決定会合で、追加緩和の効果を
見極めたいとして、当面の金融政策を「現状維持」と
することを全員一致で決めた。

中国経済の減速長期化で輸出や生産の回復が遅れているため、
景気認識については前回会合で下方修正した「持ち直しの動きが
一服」から「横ばい圏内の動き」へ表現を変え、
日本経済が踊り場に入ったとの認識を示した。

今回は強力な金融緩和を求める前原誠司経済財政相が
出席したため、様々な思惑を呼び、市場では会合前後に
動意がみられた。

日銀は前回9月19日の会合で資産買入基金
10兆円積み増す追加緩和に踏み切っており、
前回の緩和効果を見極めるには時期尚早と判断した。

ただ、会見した白川方明総裁は「景気・成長率を
下方修正すれば、物価も下方修正することとなる」と述べ、
今月30日の決定会合でまとめる「経済・物価情勢の展望
(展望リポート)」で、2012年度などの経済成長率と
物価上昇率を引き下げる可能性を示唆するなど、
今後の追加緩和に含みを持たせた。

白川総裁は今回、これまでになく
中国経済の足元と先行きリスクを詳述。

「素材を中心に在庫が積みあがっているなかで
生産の抑制が進んでいない」、「中国経済の先行きは
不確実性が大きい」などと述べ、欧州危機に加え
中国経済が日本の景気を下押しする可能性を警戒した。

さらに、会合では悪化している日中関係の影響が
議論されたことを明らかにし、「日中両国は重層的な
相互依存関係にあり、今後の展開や経済面への
影響を注意深く見る必要」があるとした。

また、製造業の悪化が消費や雇用など現在は
堅調な非製造業に波及する可能性を注視するとした。

今回は前原経済財政相が政府代表の担当閣僚として
2003年の竹中平蔵氏以来、9年ぶりに出席した。

前原氏は就任直後から日銀に対して強力な金融緩和を
求めており、同相が前日に会合出席の意向を表明して以降、
市場では金利低下、円安圧力が見られたが、追加緩和が
見送られると円は対ドルで数十銭ほど円高に振れた。

前回の追加緩和から2週間しか経過しておらず、
市場では今回の政策据え置きは想定通りと受け止められている。

日銀は同日、LIBORロンドン銀行間取引金利)の
不正操作問題を踏まえて延期していた米ドルによる
成長基盤強化支援の資金供給(成長支援オペ)の
第1回貸し付けを10月中に行うと発表した。

LIBOR改革の議論進展を受けたもの。