フランスを最上級から1段階格下げ、財政に不安=ムーディーズ

大手格付け機関ムーディーズ・インベスターズ・サービスは19日、
フランスの政府債格付けを最上級の「Aaa」から「Aa1」に
1段階引き下げた。
景気悪化によって財政の先行き見通しが不確実になったことが理由。

構造的な問題や「持続的な競争力低下」を理由に、
格付けの見通しは、さらに下げる可能性がある
「ネガティブ」を維持した。

すでにスタンダード&プアーズ(S&P)が1月にフランスを
「AAA」から1段階格下げしている。

ムーディーズの格下げを予想する声は多かったが、
財政再建と経済回復に取り組むオランド大統領に
とっては打撃だ。

ムーディーズは、1段階格下げを決めた最大の要因を
「経済成長のリスク、それによる政府財政のリスク」と指摘。

そのリスクをもたらしているのが「根強い構造的問題」で、
具体的に「徐々にだが、直実に進んでいる競争力の低下や
輸出型産業の衰退をもたらしている低レベルの技術革新や
労働・サービス市場の硬直性」を挙げた。

モスコビシ経済財務相は、ロイターに、ムーディーズの格下げは、
オランド政権が改革を進める動機付けになると述べた。

ただ、S&Pの格下げ後、フランスの債券利回りは
過去最低水準で推移しているとも指摘した。

ムーディーズの発表を受け、ユーロは対ドルで
約2週間ぶり高値から軟化した。

シティのG10通貨戦略責任者のスティーブン・イングランダー氏は
「直後の反応が一巡するまで、ユーロはさらに下げる可能性がある。
ただ、これ(ムーディーズの格下げ)はどちらかというと
現状の評価であり、市場にとって新たな情報ではない」と指摘した。

ムーディーズは格付け見直しにあたり、2013年予算と、
産業競争力強化策へのオランド政権の対応に注目していた。

声明は「ムーディーズは、政府が最近、構造問題の一部に
対処する対策を発表したことを認識している。しかし、
これらの対策は競争力を回復するのに十分でないとみられる。
ムーディーズは、これに関する過去20年の政府の取り組みは
おそまつだったと指摘する」としている。

ムーディーズに先駆けてフランスを格下げした
S&Pの格付けは現在「AAプラス」。

フィッチ・レーティングスの格付けは「AAA」。

見通しはS&Pもフィッチも「ネガティブ」。

最上級格付けを喪失は、対フランス投資に影響する。

多くの投資ファンドは、ポートフォリオの最も質の高い
アセットの条件を、少なくとも2社から最上級格付けを
取得していることと規定しているからだ。

ムーディーズの格下げによって、
フランスはこの条件を満たさなくなった。

引き下げ後の格付けは依然高いものの、従来より
信用力が低下したとみなされたことで、今後
資金調達コストが上がる可能性がある。

資金調達コストの上昇は、すでに苦しい
財政運営に一段の負担となる。

マーク・インベストメンツのアクセル・マーク社長は、
格下げは「改革を進めていないことのツケ」と指摘した。

フランス国債10年物利回りは現在、S&Pが
格下げした時より1%ポイント近く低い、
2%を僅かに上回る水準で推移している。

アナリストは、格下げに伴うポートフォリオ調整に
絡む売りは限定的と予想している。