緩和方針で応酬、物価上昇率の表現で修正提案も=日銀議事要旨

日銀は26日、追加金融緩和と経済・物価情勢の展望
(展望リポート)を発表した10月30日の
金融政策決定会合の議事要旨を公表した。

委員らは金融緩和の方針をめぐる記述について
激しい応酬を繰り広げ、佐藤健裕審議委員が
物価上昇率1%を「見通せるようになるまで」
との記述を「安定的に達成するまで」と変更する
議案を提出したことが分かった。

白川方明総裁がデフレ脱却に向けた政府との共同文書を提案し、
複数の委員が「日銀の独立性に疑義を持たれることが
あってはならない」と警戒したことも明らかになった。

日銀は同日の金融政策決定会合で資産買い入れ基金
11兆円増額を柱とした追加緩和を決定。

9月に続き2カ月連続の異例の追加緩和に踏み切ると同時に
共同文書を政府と取り交わし、金額無制限の新型貸出制度も打ち出した。

展望リポートでは1%の物価目標が2014年に達成できない
との見通しが示されたが、基金の増額は2013年末で
終了の予定のため、2014年以降の基金の運営方針をめぐり
文言の変更が議論される一因となった。

議事要旨によると、佐藤委員による議案は佐藤、
木内登英両審議委員のみが賛成、他の7人の
メンバーは反対に回り否決された。

採決に先立ち、 佐藤・木内委員とみられる複数の委員が、
文言変更で「緩和姿勢をより明確にすることができないか」
と問題提起した。

大方の委員は「市場金利は中期ゾーンまできわめて低位で、
金融緩和継続に対し疑念が生じているとは考えられない」と反対した。

複数の委員は「将来的に文言の修正が効果をもつ局面に
なることも考えられるが、現時点ではない」との見解を示した。

また複数の委員は「増額を完了したら直ちに基金残高を
取り崩すという運営を想定している市場関係者が
いるとは考えにくい」と指摘。

何人かの委員は、市場に誤解があるのであれば「増額完了後も
1%を目指して強力に金融緩和を推進していくと改めて説明し
払しょくすべき」とし、2014年以降も基金の残高を取り崩さない
との暗黙の前提が示唆されている。

委員は、海外の多くの国や地域で製造業部門を中心に
減速の度合いが強まっているとの認識で一致。

輸出、生産に加え、内需の一部でも、9月の金融緩和の
強化時にみていたよりもさらに下振れている、
との見解で一致した。

何人かの委員は中国経済の成長率が
「明確に回復するには時間を要する」と警戒。

委員らは、米国経済が財政の崖の影響で2013年前半の
経済活動大きく抑制される可能性があるとも述べている。

複数の委員は「生産や景気動向指数の動きなどを踏まえると、
事後的に景気の後退局面入りが認定される可能性がある」
との見方を示している。

新型貸出制度について、複数の委員は「金利の低下余地は
限られてきているが、現在の金融環境が十分に活用されていけば、
金融緩和が経済・物価へ及ぼす影響が強まる」との期待を述べた。

一人の委員は、同貸出制度が海外の「非居住者向けの円貸出を
貸出増加の算出対象に加えることは、円高圧力の緩和という
副次的な効果も期待できる」と述べた。

基金については、何人かの委員が「リスク性資産の
増額の完了期限が本年末に迫っている一方で、
わが国の景気が弱含みとなっていることを踏まえると、
引き続き、リスク性資産を幅広く買い入れていくことが
適当」と述べた。

白川総裁は、「景気は弱含みとなってきており、日中関係
影響の広がりなど新たなリスク要因も出てきている」と述べた。

厳しい情勢でデフレ脱却を達成するには「政府と日銀が
最大限の努力を行うことや、共有している認識を、
改めて対外的に明確なかたちで示してはどうか」
として共同文書を提案している。

会合には、内閣府からは
松山健士審議官が当初の9時から出席。

その後、10時25分からは
前原誠司経済財政相が出席した。

発言者が松山審議官か前原経財相かは不明だが、
内閣府出席者は、「消費税率引き上げの影響を除いた
消費者物価上昇率は1%に届いておらず、
さらなる努力が必要」と指摘した。

財務省出席者は、「物価上昇率1%に達する時期は
不確実性が大きい」とし、金融政策の姿勢が伝わるよう
「当面目指すこととしている1%の早期実現に向け、
継続的かつ、積極・果断な金融政策運営に取り組んで
頂きたい」とコメントしている。