共和の減税延長法案めぐり「崖」協議こう着、大統領は拒否権行使へ

与野党の「財政の崖」をめぐる協議は19日、
年収が100万ドルを超える上位富裕層を除き
減税を延長する法案を共和党が下院で強行採決する
構えを見せていることで、こう着状態に陥った。

オバマ大統領は記者会見で「共和党が私にイエス
ということは極めて困難だ。だがいつかは
克服しなければならない」と発言。

大統領への個人的なわだかまりが原因となり、
共和党は自らの考えに執着していると批判した。

一方、共和党のベイナー下院議長は、
大統領は「理不尽」と応酬した。

協議を中心となって進めてきたオバマ大統領と
ベイナー議長は、それぞれ譲歩案を提示。

協議は大きく進展し、合意が
視野に入ってきたかに思われた。

だが共和党は年収100万ドル以下の家計を対象に
減税を延長する法案を20日に下院で採決する構えを
崩しておらず、これまでの進展をほぼ無視した
格好となっている。

これを受けオバマ大統領は、同法案が議会を通過しても、
拒否権を行使する方針だと言明した。

ベイナー議長のオフィスは、オバマ大統領が
減税延長法案の採決に反対していることに猛反発している。

議長の報道官を務めるブレンダン・バック氏は
「緊急対応策である法案にホワイトハウス
反対の立場を示していることは、ますます不可解で
理不尽」と批判した。

議長はこの後に開いた記者会見で、国民の大半に
減税措置を延長する「プランB」法案について、
通過に必要な支持票を確保したことを明らかに
するとともに、均衡の取れた歳出削減計画で
「本気」になるようオバマ大統領に迫った。

ベイナー議長の発言を嫌気し、
米株は下げ幅を拡大した。

オバマ政権と議会共和党は昨年、連邦債務の
上限引き上げをめぐっても激しく衝突した。

オバマ大統領は19日、来年初めに再び対応が
必要になる債務上限をめぐる交渉によって
「財政の崖」問題が行き詰まるようなことが
あってはならないとの見解を示した。

共和党議員にとっては、少なくともこのプランBを
採決・支持すれば、支持者に対し、オバマ大統領の
政策を阻止するために最善を尽くしたとの言い訳が立つ。

また法案は、党内の財政強硬派が反対する富裕層への
増税を盛り込んでいることから、採決は議長の譲歩案に
対し党内の支持をどれだけ確保できるかの試金石ともなる。

オバマ大統領とベイナー議長は最大のイデオロギー
違いを乗り越えたようにも見えるが、歳出削減や
増税の規模の詳細ではなお開きがある。

オバマ大統領は「おそらくわれわれの間に
ある溝は数千億ドルの違いだ」としている。

共和党が年収100万ドル超の上位富裕層への増税
譲歩する一方、大統領は増税対象を当初の
年収25万ドル以上から40万ドル以上に引き上げ、
歩み寄っている。

複数の米政府高官はこの日、共和党が減税延長法案を
下院で採決する構えを見せていることを受け、
協議がこう着状態に陥ったとの認識を示した。

オバマ大統領は交渉関係者全員に対して
「行き詰まりの原因」を洗い出すよう求める意向だという。

こうした中、共和党のマコネル上院院内総務は
「残業もいとわずに懸命に取り組めば、週末までに
すべての仕事を片付ける時間はまだ十分ある」と述べ、
週内の決着はあり得るとの考えを示した。

オバマ大統領と共和党指導部が合意したとしても、
両党メンバーの支持が必要になる。

多くの民主党議員は、高齢者給付金削減に
応じた大統領の譲歩案に難色を示している。

ただ、一部の同党指導部メンバーは
受け入れに前向きな姿勢をうかがわせている。

民主党下院指導部のバンホーレン議員は、
大統領の案について「これらの特定の変更は
好ましくない」とした上で、「合意に向けて
歩み寄ることに前向きな大統領の姿勢を
表している」と指摘した。