日銀次期総裁に黒田ADB総裁、政府が起用固める=関係筋

政府は3月19日に退任する日銀の白川方明総裁の後任に、
黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を起用する方針を固めた。

安倍政権が掲げる大胆な金融緩和を進めるには、
緩和に積極的で、元財務官として市場を熟知し、
世界の金融界に人脈を持つ黒田氏が適任と判断した。

同じく3月19日に任期切れを迎える2人の副総裁には、
学者と日銀から起用する方向で調整している。
複数の関係者が明らかにした。

政府は総裁と副総裁の人事案を週内に国会へ提示する方針。

衆参両院の同意が必要な日銀正副総裁など国会同意人事では、
自公両党で過半数に16議席届かない参院の動向が焦点となるが、
院内第一会派を形成する民主党は、財務省出身者を
事実上容認する姿勢を示していた。

財務省出身では武藤敏郎元財務次官も有力候補となっていたが、
2008年の日銀総裁人事で財務省出身を理由に否決されており、
「政治主導による大胆な改革」イメージが後退することを
懸念した政権側の意向として、日銀に批判的で緩和に
積極的な黒田氏を次期総裁とする方向が固まった。

また、みんなの党財務省OBに反対する姿勢を明確にする中、
主計畑の武藤氏で民主党がまとまれるとの確信が得られなったことも
黒田氏への流れを支援した。

一方、同じく有力視されていた岩田一政日本経済センター理事長は、
日銀による外債購入が持論で、先にモスクワで開かれた
20カ国・地域(G20財務相中央銀行総裁会議において
日本の通貨安政策がけん制される中、就任に
否定的な見方が強まっていた。

黒田氏が日銀総裁となる場合、
ADB総裁を任期途中で退任することになる。

日本は中国など他国と後任ポストを
争う可能性が出てくる。

黒田氏は、1月に都内で行われた景気討論会で、
日銀の金融政策運営について「2%の明確な物価目標を掲げ、
あらゆる手段で限界を設けずやるべき」と発言。

昨年のIMF世銀総会の際のインタビューでは、
金融政策の手段として「国債からインデックス債、
株式など山のようにある」と指摘。
一段の金融緩和を求めていた。

また元財務官として為替を中心に市場を熟知していることも
「市場との対話」が重要となる日銀総裁の条件に合致する。

ADB総裁を務めたことなどから
世界への政策発信力も期待される。

日銀総裁ポストは1969年から30年近くにわたり
日銀と旧大蔵省出身者がたすき掛けで担ってきたが、
日銀の独立性を高めた1998年の新日銀法施行以降は、
3代続けて日銀出身者が就いてきた。