競争的な通貨切り下げ、問題への対処妨げるだけ=独連銀総裁

欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーの
イトマン独連銀総裁は25日、競争的な通貨切り下げは、
各国が直面する経済問題への対処を妨げるだけとの見解を示した。

イトマン総裁はジュイ・アン・ジョザス(フランス)で
行われた討論会で「競争的な通貨切り下げによって、
最終的に勝者は生まれないというのが私の考えだ」とし、
「われわれが直面する真の問題から注意をそらす以外の
何ものでもない」と語った。

また同総裁は、ECBの現行金融政策の軌道は財政政策に
接近し過ぎだとし、伝統的な金融政策に回帰すべきとの
見方を示した。

総裁は講演原稿で、中銀に債務危機を解決することはできず、
財政政策上の役割を果たすよう求められるべきではない
との立場を改めて表明した。

金融政策や為替政策は債務危機の解決策にはなり得ないとし、
「中銀は物価安定に注力するとともに独立性を維持する必要があり、
財政政策と過度に密接に絡み合ってはならない」との見方を示した。

政治的な圧力を受けている中銀として日銀を例に挙げたが、
ユーロ圏でも中銀に対する危機解決の期待が過剰に
膨らんでいるとけん制し、インフレによる購買力低下に
ついて懸念すべきとの考えを示した。

中銀による過剰な行動は通貨ユーロの価値を損ないかねず、
より大きな問題だとし、「物価安定や購買力を重視するなら
懸念する必要がある」と指摘。

「欧州では金融政策と財政政策が互いに接近している」とし、
こうした傾向はインフレ高進と財政規律の低下という結果を
招くことが多いとの見方を示した。

ユーロ圏第2の経済大国であるフランスが財政目標を達成し、
他のユーロ圏諸国の手本となることが重要とも主張した。

「ユーロ圏は信頼感の危機に直面していることを認識する
必要がある」とした上で、「財政規律の実行の甘さから、
財政赤字を変動目標とみる向きも出ている」と指摘。

こうした状況では「欧州通貨同盟(EMU)の中核国が
明確なシグナルを送り、EMUの財政規律及び協定に
対する信頼感とEMUの統合戦略に対する信頼感を
高めることがとりわけ重要だ」とし、「コミットメントは
常に拘束力を持つべき」との立場を表明した。