メルケル独首相、緊縮策批判に屈さぬ姿勢示す

ドイツのメルケル首相は今週とある出版記念イベントで、
南欧諸国がドイツ主導の財政緊縮策をさらに進めることが
可能かと聞かれた際、苛立ちを隠しきれなかった。

欧州内の同盟国ではここ数日ドイツに対抗し、
事実上債務削減の時代は終わったとする発言が
目立っただけに、メルケル首相の不満は明らかだった。

聴衆が見守る中、壇上に立ったメルケル首相は
緊縮策の質問に対し、「私はこれを予算の均衡と呼ぶ」
と答え、「緊縮策という言葉が使われているが、
この言葉には本当に邪悪な響きがある」と指摘した。

総選挙を5カ月後に控えるメルケル首相は、
欧州の同盟国からだけでなく、国内の
中道左派野党からも批判を浴びている。

ドイツが言うところの「宿題」である歳出抑制と
徹底した構造改革をずっと他のユーロ圏諸国に
強要してきたからだ。

しかしそのような批判があっても、メルケル首相が
壇上で表した不快感が示唆するのは、ドイツは
今までの主張を曲げないということだ。

それは首相の側近が、ユーロ圏加盟国に対して
財政規律の緩和を許すような発言をする欧州委員会
対して示す反応からも見て取れる。

ウェスターウェレ独外相はブリュッセルで、
欧州委員会バローゾ委員長が緊縮策について
「限界に達した」と述べたことを批判した。

外相は「欧州が財政再建をあきらめて、かつての
債務積み上げを繰り返すやり方に戻れば、
何年もの間にわたり、大量失業が続くだろう」
と語った。

欧州連合EU)統計局(ユーロスタット)が
22日公表した統計では、ユーロ圏17カ国の
財政赤字の合計は対GDP比で3.7%となり、
2011年の4.2%から縮小した。

このデータばかりでなく、南欧諸国の景気は
悪化し続けているという事実が、財政健全化が
行き過ぎたと主張する人々を勢いづかせている。

2013年にユーロ圏経済は2年連続の
マイナス成長となると予想されている。

ギリシャやスペインでは
4人に1人以上が失業している。

ドイツ政府経済諮問委員会(5賢人委員会)の
メンバーであるペーター・ボーフィンガー氏は
ロイターに、「積極的債務削減政策が機能している
という指標は一つもない」と緊縮策を批判。

しかしメルケル首相と首相に近い人々は、
今圧力を弱めればユーロ圏加盟諸国は一斉に
財政健全化努力を止めてしまい、金融市場に
懸念を呼び起こし、危機を再発するのではないか
と恐れている。

フランスとスペインは昨年の
財政赤字削減目標が未達だった。

ドイツが黙認する中、両国ともに財政赤字
GDP比をEUの上限である3%とする期限の
先延ばしが近く決められる予定だ。

しかし関係者によると、オランド仏大統領が
歳出削減と構造改革にさらに力を入れない限り、
ドイツは態度を軟化させるつもりはない。

メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)で
財政に詳しい有力議員ノルベルト・バーセル氏は
ロイターに、「フランスが何よりも我々を心配に
させている」と述べた上で、「フランスがあと一年
必要だということは我々も承知しているが、
それ以上は延ばせない」と語った。