2015年度の物価見通し1.9%、期待の高まりなどで=日銀展望リポート

日銀は26日、半年に一度の「経済・物価情勢の展望」
(展望リポート)を発表し、2015年度の物価上昇率
1.9%程度との見通しを示した。

景気回復による需給バランス改善や、輸入物価上昇に加え、
大規模な金融緩和によって予想物価上昇率が一段と
上昇していくことを理由に挙げた。

ただ、いずれの要因も不確実性が高いことに言及しているほか、
中央銀行による財政ファイナンスが想起されうる懸念や、
金融機関の国債保有への影響などを指摘し、リスクの大きさも
意識したものとなっている。

経済・物価見通しについて、今回はこれまでより期間を伸ばして
4年分を提示し、新たに2015年度の見通しを示した。

9人の政策委員の大勢見通しでは、消費者物価(除く生鮮)は
2015年度が1.9%まで上昇するとした。

その間、2013年度は0.7%(従来0.4%)、
2014年度は1.4%(同0.9%)とした。

消費税引き上げの影響を織り込んだ見通しは、
2014年度が3.4%(同2.9%)、2015年度が2.6%と、
民間の見通しより高い水準を予想している。

背景となる経済情勢は、0%台半ばとされる潜在成長率を
上回る成長を続けることを前提としている。

第1に海外経済が成長率を高めること、第2に日銀自身の
「量的・質的金融緩和」で長めの金利や資産価格などを通じた
波及ルートに加え、期待の転換を通じて予想物価上昇率
上昇させ、実質金利を低下させる効果が期待できる。

これらが民間需要を刺激する効果を上げている。

第3に、公共投資は、各種経済対策や復興関連予算の
増額などから、当面、高水準で増加を続けることを挙げている。

第4に、政府による規制・制度改革や企業による
内外の潜在需要の掘り起こしなどの取り組みが
徐々に進展し、企業や家計の中長期的な成長期待は、
緩やかに高まっていくとする。

物価についても、第1に需給バランスが改善し、
労働需給引き締まりから名目賃金が上がることを
見込んでいる。

第2に、中長期的な予想物価上昇率「量的・質的金融緩和」
のもとで上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である
2%程度に向けて次第に収れんしていくとみている。

第3に、円安で輸入物価が上昇することを見込む。

ただし、こうした物価見通しは、3つのいずれについても、
不確実性の高さを指摘している。

期待が高まらないことや、賃上げが行われない可能性、
国際商品市況や為替動向に輸入物価が左右されるリスク、
その価格転嫁の不確実性を挙げている。

金融政策運営は、これらの中心的な見通しの実現性が
高いと判断した上で、「リスクは上下にバランスしている」として、
シナリオ通りに物価が上昇していく可能性を慎重に見ている。

さらに「長期的には、資産市場や金融機関行動において
過度な期待の強気化を示す動きは観察されない」と
バブルの懸念は否定しながらも、「政府債務残高が
累増する中で、金融機関の国債保有残高は高水準で
ある点には留意する必要がある」として、国債市場の
動向による影響を懸念している。

さらに、先行きの金融政策運営については「日本銀行は、
2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に
持続するために必要な時点まで、量的・質的金融緩和を
継続する」とした。

ただし長期にわたる国債買入れの副作用にも配慮し、
注意書きとして「市場から大量の長期国債を買入れる
こととなるが、これは、金融政策目的で行うものであり、
財政ファイナンスではない」と断りを入れた。