佐藤・木内委員、物価2%達するとの見通しに反対意見=日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は26日の金融政策決定会合後の記者会見で、
同日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)に盛り込んだ、
2015年度までに物価が「2%程度に達する可能性が高い」という
記述をめぐり、佐藤健裕・木内登英の両審議委員が反対したことを
明らかにした。

一方で総裁は、「2015年度前半には物価が2%に達すると
考える政策委員が多いと思う」と指摘。

現在の消費者物価指数はマイナス圏にあるが、今会合で
追加緩和が必要との意見はなかったと述べた。

日銀は今回、展望リポートの見通し期間を
従来の2年から3年に延長。

黒田総裁は「諸外国の中央銀行も3年程度の見通しを
示しており、金融政策の効果が波及するには時間が
かかるため」と理由を説明した。

初めて公表した2015年度の物価は、政策委員の見通しが
プラス0.9%からプラス2.2%(消費増税を除くペース)
とばらつきが大きいが、総裁自身を含め2015年度前半に
2%との見方が多いとした。

今月4日に日銀が「異次元緩和」を公表後、国債市場で
金利が乱高下したことについて、「短期債と超長期債で
一時的に変動率(ボラティリティ)高まったが、
日銀によるオペ(公開市場総裁)対応などで
安定した」との見方を示した。

日銀は4日以降、市場参加者との会合を2度開いて
市場安定化のための情報交換を行ったが、「今後も
市場参加者の意見聞き、必要なら調整行う」と述べた。

日銀は異次元緩和の政策波及経路の1つとして、
利回り曲線(イールドカーブ)全体を引き下げることで
資産価格に効果を与える、としているものの、物価が
本当に2%に向かうと市場が信じれば、金利
上昇してしまう可能性がある。

総裁は「中長期的には、物価が上がるとある程度
名目金利が上昇するのは自然」としつつ、
「直ちに名目金利に大きな上昇圧力が働くとは
思えない」と述べた。

また、「年間50兆円の長期国債買い入れをバランスよく
実施することで、金利上昇をかなりの程度抑えられる」と語った。

展望リポートの見通しが大幅に上方修正されたため、
「数値は見通しというより目標でないか」との質問には
「目標とは考えていない」と否定。

「政策当局による経済見通しは
政策効果を織り込むもの」と説明した。

見通し期間の延長については不確実性が高まるとして、
白川方明・前総裁時代は日銀内でも慎重な見方が多かった。

しかし今回は「政策委員の総意」で延長を決めたとし、
黒田新総裁が主導したとの見方を否定した。

「政府からの圧力もなかった」と述べた。

2年程度での実現性に一部懐疑的な見方もある
2%の物価目標達成について、黒田総裁は
需給ギャップの縮小と期待インフレ率の
引き上げで実現する」と説明。

すでに「様々な指標で物価上昇期待の
上昇傾向みられる」と指摘した。

米欧ではデフレ圧力をめぐる議論がにわかに
高まりつつあるが、「米欧の物価の動きが直ちに
日本の物価上昇率に影響することはない」と述べた。

今回の見通しの前提となる為替水準については、
「為替の水準や傾向について話すのは適切でない」とし、
「日銀は物価目標を目指して金融政策を行っており、
為替は目標や目的に入ってない」と説明。

異次元緩和が通貨安誘導との見方をけん制した。

また、ドル/円が100円手前でこう着状態に
あることについても、「円高の修正過程が終わったか
についてはコメントを控える」と答えた。

異次元緩和は金融機関が大量保有している国債
吐き出させることで、代わりに金融機関が貸出を
伸ばしたり、株や外債などのリスク性資産を
買うようにする「ポートフォリオ・リバランス」
効果を狙っており、総裁は「為替や株、貸出などに
効果がみられており、今後も効果が続く」と述べた。

国債の代わりに買われると期待される資産として
「株式や海外資産、一部の経済学者が指摘するように
『実物資産』」などを挙げた。

異次元緩和による年間50兆円と巨額の国債買い入れは、
政府が消費増税など財政健全化を進める姿勢を後退させれば、
財政ファイナンス(財政の穴埋め)と受け取られ、
長期金利が急上昇するリスクと裏腹だ。

菅義偉官房長官経済財政諮問会議で、基礎的財政収支の赤字を
2015年度までに改善する政府目標について柔軟な対応を求めた
件について問われると、「政府の財政健全化は年央に示される
計画に従って進めていただきたい」と述べた。