債券市場注視し弾力的に国債買い入れ、年50兆円ペース維持=日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は22日の決定会合後の会見で、
長期金利の上昇は景気や物価の回復期待も要因だが、
ボラティリティ(変動率)が高く十分注意が必要」と警戒。

市場安定のために国債買い入れは、年50兆円との
計画の範囲内で頻度や年限などについて
「弾力的に運営する」と強調した。

長期金利の上昇による実体経済への影響は
現時点でみられず、実質金利は下がっている
との見方も示した。

長期金利は4月4日の日銀による「異次元緩和」導入後から
乱高下し、緩和導入前よりも高い水準まで上昇した。

黒田総裁は上昇の要因について、欧米長期金利や株価の上昇、
円安進行を背景に「物価上昇や景気回復期待の要素があり」
「実質金利はたぶん下がっている」と述べた。

一方、物価・景気回復期待による金利上昇と
日銀の国債買い入れによる金利低下圧力の区別は
現実には難しく、市場が「新たな均衡値を
探している面もある」と指摘。

「日銀の国債買い入れによる効果を相殺して
長期金利が上がることもあり得る」とし、
ボラティリティが過度に拡大することは
回避しなければならない」と急激な上昇に
対応する姿勢を強調した。

長期金利は「短期金利のように中央銀行
完全にコントロールすることはできないが、
働きかけはできる」とも述べた。

黒田総裁は4月4日の異次元緩和公表時に、
あらゆる年限の金利を押し下げると強調したにもかかわらず
金利は上昇しているが、「金利引き下げによる緩和効果は重要。
引き続き尽力する」とし、金利上昇を容認しているわけではない
との姿勢を強調した。

日本の長期金利が米長期金利と連動して上がる可能性について、
長期金利が国際的に連動する可能性は否めない」としつつ、
日米では経済の回復ペースに差があり、「長期金利が同じように
動くことはおそらくない」との見方を示した。

長期金利上昇の影響について「今の時点で実体経済
大きな影響を及ぼすとは見ていない」と指摘。

長期金利の上昇に伴う社債発行の延期について
金利先高観があれば社債発行は増えるはず。
企業の資金調達コストは低水準で推移しており、
設備投資などに影響は出ていない」と述べた。

今後日銀が国債買い入れを進めるため「長期金利
跳ね上がることは予想していない」との見方を示した。

今後の対応策として、国債の買い入れオペ(公開市場操作)を
「頻度やペースの調整、銘柄など弾力的に行う」とし、
4月4日の政策公表資料には国債買い入れについて、
本文で年間50兆円、脚注で毎月7兆円強と公表していたが、
「年間50兆円のペースを変えず、その中で弾力的に
対応する」と述べた。

長期金利が0.92%まで急騰した5月15日に日銀が実施した
1年物の固定金利オペなどを含め「弾力的にオペを実施」、
「債券市場の動きを点検し市場参加者と密接に意見交換する」
と述べた。

市場関係者や一部日銀関係者の中には、2%の物価目標を
2年との短期間で実施するとの政策そのものが金利
波乱要因との見方があるが、黒田総裁は「2年を念頭に
2%目標を達成する政策に変化はない」と言い切った。

日銀が4月と5月は事前公表した国債買い入れオペの計画が
6月分は未公表である点について、「特に(公表を)
遅らせているわけでない。必要に応じて買い入れペースの
調整を行っていく」と述べた。

今後のリスク要因として、「消費税引き上げが延期されれば
長期金利の)リスクプレミアムが上昇する懸念がある」とし、
「消費税引き上げを含む財政健全化が進められることが必要」
と強調した。

景気の現状については、「株価が上昇傾向をたどり、
マインド改善で個人消費の底堅さが増している」とし、
「日本経済は年央には明確な回復軌道に乗ってくる」
との見通しを示した。

雇用やボーナスは改善されつつあるものの
「所定内賃金はまだ上がっていない」と指摘。

今後は2%の物価目標が持続的に達成できれば「生産、
所得、支出が順調に伸びる」が、長期的な潜在成長力の
引き上げは「成長戦略にみられる供給力や生産性の向上が
不可欠」と述べた。