債券市場丹念に点検、物価2%は柔軟な目標=宮尾日銀委員

日銀の宮尾龍蔵審議委員は28日午後、都内の
日本外国特派員協会で講演し、このところの
長期金利の動向について「米欧の金利上昇や
国内の株価上昇が背景」との見方を示し、
「債券市場を注視する」と強調した。

2%の物価目標は「どんな犠牲を払っても
達成するものでない」、「柔軟な目標」と指摘した。

宮尾委員は日銀が2年を念頭に達成するとしている
2%の物価目標について「他の多くの中央銀行のように、
景気回復を伴ってバランス良く実現されるもので、
どんな犠牲を払っても達成すればよい硬直的な
枠組ではない」と説明。

「2%との目標を示しているが、少しのずれも
許容しないということではなく、平均的かつ
安定的に維持されるよう運営されるべきもの」とした。

また柔軟な目標とすることで「日銀の
信認が失われることはない」とも述べた。

4月4日の異次元緩和導入後の長期金利については
「米欧長期金利の上昇や日本の株価の上昇などを
背景の上昇する局面もみられている」と指摘。

今後も、「景気回復期待やインフレ予想が
高まってくることで、長期金利のベースとなる
予想短期金利の部分が徐々に高まってくる」とし、
長期金利は金融緩和の効果と合わせ「上下両方向の
力が加わりながら推移していく」との見方を示した。

景気回復期待などで長期金利に上昇圧力がかかっても
金融緩和で「金利に下押し圧力をかけ続けることで、
景気回復をさらに強力にサポート」するとし、
「長短金利が全体として安定的な経路に沿って
推移することが重要」と強調した。

このため「債券市場の動きを丹念に点検し、市場参加者と
密接な意見交換を行い、買い入れ頻度やペース、
買い入れ対象の調整をするなど弾力的なオペ
公開市場操作)運用を行っている」と述べた。

財政懸念による「意図せざる悪い金利上昇は
避けなければならない」と指摘。

「経済の規制・制度改革など、経済全体の実力を高める
方策を前に進めて、日本経済への信認を常に向上させること」
の必要性を強調した。

異次元緩和の導入について「日銀は未踏の領域に
さらに踏み込む決断をした」が、今後は「海外経済情勢や
国際資本市場動向などリスクが顕在化する場合、総合的に
判断し必要な調整行っていく」と述べた。

日銀が2001年から2006年に実施した「量的緩和政策」
については、独自の分析を披露し「生産に対して
相応の効果があり、株価や為替レートなどを通じた
波及ルートが機能していた」と指摘した。

これまで日銀では金融システムの安定化には
寄与したものの、実体経済への効果は必ずしも
明確でないとの意見が主流だった。

景気の先行きについては「本年中ごろには緩やかな
回復経路に復していく」との見方を示した。

消費者物価指数は「今年か来年には1%に接近する見込み」で、
「2014年度には1%を上回る物価上昇率を実現する」と述べた。

このように景気回復続けば「来春には賃金も
上昇するのではないか」との見方を示した。

一方、海外経済については「中国や欧州経済など、
下振れリスクの方が大きい」として注視する姿勢を示した。