中国でのシステミックリスクは想定せず=渡辺JBIC副総裁

国際協力銀行JBIC)の渡辺博史副総裁(元財務官)は
28日都内で開いた記者団との懇談会で、中国での
不良債権問題について「当座、システミックリスクや
いくつかの銀行が倒れる事態にはならない」と見通したが、
問題解決のために米国債を売却して資金調達を行う
可能性があり得ると指摘。

米国が量的緩和の出口論を模索するなかで、
外的要因による金利上昇が加われば米国の
マネージメントが難しくなると警戒した。

7月下旬にスクワで開催されるG20財務相
中央銀行総裁会議で影響を最小限にするための
情勢分析を求めたが、協調行動(ジョイントアクション)
にはなりにくいと見通した。

中国の不良債権問題について渡辺氏は「来年くらいに
起きると思っていたが、早めに起きている」と警戒しながらも、
中国人民銀行中央銀行)がシステミックリスクを
生じさせないと宣言していることをあげ、「当座、中国で、
システミックリスクやいくつかの銀行がバタバタ倒れる
事態にはならない」と見通した。

一方、中国が不良債権処理のための資金調達手段として、
外貨建て資産を売却すれば「米国債を市場で売ることが
起こるかもしれない」と指摘。

経済・金融市場が平常化していれば吸収できる
米国の長期金利上昇も、量的緩和の出口論が議論され、
今後「金融がタイトになり金利上昇が起きるときに
さらに外的要因で金利が上がればマネージメントが
難しくなる。タイミングがよくない」と警戒した。

もっとも「今は、流動性の手当てをしている。(米国債を)
売るというレベルにいくにはもう少し(時間は)かかる」
と付け加えた。

それでも、米国債が売却される事態になれば
「バランスの問題として、ユーロ債、円債も
売られることはあり得る」と指摘。

各国の金利が上昇した場合にどうするかなど
「G7(先進7カ国)間で心の準備を
しておいたほうがよい」と語った。

財務官経験者の渡辺氏はその際、「一方的に中国を非難しても
仕方がない。中国の場合は切羽詰まって(米国債を)売ることに
なるため、非難しても止まらないかもしれない」とも語り、
「声明で中国はけしからんと言うのはナンセンスで、
事を複雑にするだけだ。仕方がないなと受け止めて
どうするかということを、G7の側で準備して
おいたほうがよい」と提言した。

また、7月下旬にモスクワで開催されるG20財務相
中央銀行総裁会議でも、影響を最小限にするための
情勢分析を求めた。

不安定な状況が続く中国の金融市場については、
上海市場での外国人投資家の比率が大きくないことから
「外国投資家が痛む状況ではない」と語り、「全体として
協調行動という話にはなりにくい」と見通した。