市場不安定化が世界経済の足かせとなる可能性、注意必要=日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は24日、米ワイオミング州
ジャクソンホールで開催中のカンザスシティ
連銀主催シンポジウムに出席し、グローバル化
進展で国際間で金融危機が伝播しやすくなっているため、
「国際金融資本市場の不安定化が世界経済の足かせ
となる可能性について、十分な注意が必要」と指摘した。

総裁は明言していないものの、米国の量的緩和縮小の
影響をめぐる議論を念頭に置いたとみられる。

また日銀の異次元緩和は期待物価上昇率の引き上げと、
成長力強化による自然利子率の引き上げの双方から
効果を発揮しているとし、成長力強化で日本経済の
耐性を強める必要性を強調した。

日銀が講演内容をホームページに掲載した。

黒田総裁は 、国際的な資本フローやグローバル流動性に関して、
金融緩和で積みあがったベースマネーや、国債など買入れ手段の
需給変化が、1)金融市場参加者の期待形成や取引が
どのように変化するか、2)国際的な資本フローに
どのような影響を及ぼすかを重要な論点として挙げた。

同時に量的緩和など非伝統的金融政策と「国際的な
資本フローの関係は、非常に複雑」、 「金融緩和を
行ったからといって必ずしも資本が海外に流出するとは
限らない」とも述べ、日米などの金融緩和のみが
世界の流動性を左右しているわけでないとの認識も強調した。

日銀の異次元緩和の効果について「株価は上昇している」、
長期金利は足元では、海外金利が上昇する中にあっても、
ほぼ横ばいで推移している」と市場安定に寄与している
との認識を示した。

「多くの指標が予想物価上昇率が上昇していることを
示しており、名目金利の低位安定と相まって、実質金利
引き下げに効果を発揮している」とし、「すでに成果を
上げつつある」と自賛した。

金融緩和が効果を挙げるには「企業の予想収益率に相当する
自然利子率を所与として実質金利を引き下げるという方法と、
実質金利を所与として自然利子率を引き上げるという方法の
2つが考えられる」と指摘。

日銀の金融緩和は2つの側面から、
「効果を発揮しつつある」と述べた。

具体的には「日本の潜在成長力が回復すれば、
投資機会が増え、自然利子率の上昇という形になって
現れてくる」として、貸出支援基金を通じ「成長性の
高い企業や事業分野の資金需要の発掘に向けた
金融機関の取り組みを促進することを狙いとしている」
と述べた。

「自然利子率を高く維持することは様々なショックに
対する経済の耐性を高め、政策金利が再びゼロの下限に
ヒットする可能性が低下し、日本経済の耐性が高まる」
との見方を示した。