日銀総裁、異次元緩和に「確かな手応え」

黒田東彦日銀総裁20日、都内で講演し、日本の景気・
物価は日銀が掲げる2%の物価安定目標に向かって順調に
推移しているとし、4月に導入した異次元緩和の効果に
「確かな手応えを感じている」と語った。

景気回復の持続には内需の堅調継続と海外経済の動向が
鍵を握るとし、政府の財政再建に向けた取り組みにも
期待感を表明した。

黒田総裁は、日本経済の現状について、企業・家計の双方で
「所得から支出という前向きの循環メカニズムが次第に
しっかりと働いてきている」とし、「2%の物価安定の
目標の実現に向けた道筋を順調にたどっている」と断言した。

その上で、今回の景気回復は輸出と生産の増加を起点とした
「典型的なパターン」とは違い、「個人消費公共投資といった
内需の堅調さを背景に、非製造業部門が回復を主導しているのが
大きな特徴」と指摘。

景気回復を持続させるには、内需の堅調が続くことに加え、
出遅れている輸出、生産、設備投資の改善が必要とし、
そのためには海外経済の動向が「鍵」と語った。

その海外経済は、欧米の改善傾向を中心に、全体として
「次第に持ち直していく」との見通しを示し、中国経済
ついては「不確実性が高いが、堅調な内需に支えられ
安定した成長が続く」と展望。

新興国経済に関しては、米国の金融政策運営を
めぐる思惑などで「金融市場の動きが実体経済
悪影響を与えるリスクがある」とし、「現時点で
深刻な事態にまで至るとはみていないが、
引き続き注視する」と語った。

黒田総裁は日本と欧米の経済・物価情勢の違いについて、
欧米の消費者物価指数は「長い目でみれば2%を
中心とした動き」になっており、「インフレ期待が
アンカーされている」と述べる一方、日本は15年に
及ぶデフレの中で「人々の間に物価は上がらない
という見方が定着している」とし、「日本は(欧米と)
別の種類のチャレンジを抱えている」と指摘。

こうした日本の「錨(いかり)」を断ち切るには、
従来のような「景気を良くして物価上昇率を上げる」
というアプローチだけでは2%の物価安定目標を
持続的に達成することはできない、と語った。

具体的には、現在マイナスの需給ギャップをプラスに
持っていくことが必要としながらも、「それだけでは
デフレ脱却にたどりつき難い」とし、日銀は「人々の
予想インフレ率を引き上げる」ことを狙って
異次元緩和を導入したと指摘。

こうした政策を「世界的にも過去に例のない
課題に対する挑戦」と位置づけた。

定着している「デフレ期待」を払しょくすることは
「容易なことではない」としたが、予想インフレ率の
高まりなど政策効果はすでに発揮されつつあると強調。

「これまでのところ確かな手応えを
感じている」と自信を示した。

黒田総裁は講演の後、質疑に応える形で、景気回復や
海外金利の上昇にもかかわらず日本の長期金利
低位安定している背景について、日銀による巨額の
国債買い入れ金利の上昇圧力を抑制しているとし、
今後も買い入れ継続で「効果が累積的に強まる」
との見解を示した。

また、財政再建に向けた取り組みを市場や国民が
信用していることも要因に挙げ、持続的な財政構造の
確立に向けた政府の取り組みを「強く期待している」
と表明した。