日本の格付け現状維持、大幅な財政調整なければ先行き厳しい=S&P

格付け会社S&Pで日本国債を担当する
小川隆平主席アナリストは27日、日本の
格付けを現状維持とする考えを示した。

ただ、予定通り消費増税を実施しても政府が掲げる
財政健全化目標の達成は難しいとして「どこかで
大幅な財政の構造調整をしない限り、日本の信用力の
先行きには、厳しい状況が出てもおかしくない」
と警鐘を鳴らした。

S&Pの現在の日本の外貨建て・
自国通貨建て長期ソブリン格付けは「AA─」。

格付けの方向性を示すアウトルックは
「ネガティブ」としている。

来日を機に記者団と面談した小川氏は、国内景気について
「1年前に比べれば、展望は比較的明るくなっている」と指摘。

来年4月に予定通り3%の消費増税が行われる見通しが
強まっていることも、格付けに「プラスだ」との考えを示した。

ただ、2015年に消費税をもう2%引き上げて10%としても、
2020年度に基礎的財政収支プライマリーバランス)を
黒字化する目標には達しないとの政府試算に言及しながら
財政赤字の悪化ペースは少し減りそうだが、安心できる
状況になった訳ではない」と述べ、予算編成で歳出の半分を
国債で補っている状況にも懸念を表明した。

安倍政権が最重要課題とするデフレ脱却目標にも「デフレを
脱却するだけで格上げになるとは言いにくい。経済成長率が
ある程度の水準にならないといけない」と、持続的な成長が
必要だとし、さらに「歳出面、歳入面での財政(赤字)削減策。
中期的に政府が実現する可能性が高い政策」も重要だとした。

今後の格下げリスクについては「政府に財政規律改善の意識が
あまり見られず、財政赤字が縮まっていかない」ことや、「日銀の
金融政策がうまくいかない、あるいは海外金融市場・金融政策の
悪影響を受けて円高に戻る」ことなどを挙げた。

東京電力福島第1原発の汚染水問題が、国債格付けに
与える影響には「どう考えてもプラスに影響が出ないことは
間違いない」としながら、格付けには「政府の財政負担が
どうなるか」がポイントになると指摘した。