日銀支店長会議、全地域が景気判断引き上げ

日銀は21日、都内の本店で支店長会議を開催し、
全国9地域の景気判断を上方修正した「地域経済報告
(さくらリポート)」を公表した。

黒田東彦総裁はあいさつで、今年4月に導入した
異次元緩和の効果が着実に発揮されていると強調。

出席した支店長からも、地域経済に前向きな動きが
広がっているとの認識が相次いで示された。

一方、海外経済の動向や所得環境のさらなる改善を
先行きの課題に指摘する声もあがっている。

全地域が景気判断を引き上げるのは
今年4月以来、2四半期ぶり。

個人消費公共投資など内需の改善を
背景に8地域が「回復」と表現。

北陸は「着実に持ち直している」としたが、
前回の「持ち直している」から判断を進めた。

日銀では全体として、内需が堅調に推移し、生産が
緩やかに増加している中で、「雇用・所得環境にも
改善の動きがみられている」としている。

黒田総裁は午前のあいさつで、景気は「緩やかに
回復している」との認識を示した上で、異次元緩和は
「所期の効果を着実に発揮している」と評価。

日本経済は、日銀が掲げる2%の物価安定目標の実現に
向けた道筋を「順調にたどっている」と自信を示した。

会議に出席した支店長からも、景気回復の動きが
地域経済に広がっているとの認識が示された。

午後に会見した大阪支店の櫛田誠希支店長(理事)は、
内需が堅調に推移する中で、円高是正や新型スマートフォン
需要などを背景に輸出も「持ち直し傾向」とし、先行きの
近畿経済について「引き続き改善傾向が期待できる」と語った。

名古屋支店の宮野谷篤支店長は、東海地区では所定内給与が
増加に転じるなど景気の前向きな循環メカニズムが
働き出していると指摘。

主力産業である自動車の生産は「十分に利益が出る
高い水準で横ばいとなるイメージ」との見通しを示した。

札幌支店の曽我野秀彦支店長も、北海道の景気は
「夏場以降、さらに強まっている」とし、
特に観光は「絶好調」と表現した。

各支店から景気が順調に改善しているとの報告が
相次ぐ一方、複数の支店長が今後の課題として
減速する新興国を中心とした海外経済や、
所得環境の一段の改善を課題に挙げた。

輸出産業が多い近畿や東海は、先行きリスクについて
「海外経済が最も心配。振興国の減速が強まれば、
影響は大きい」(宮野谷名古屋支店長)と指摘。

櫛田大阪支店長は、新興国需要が弱めに推移する中で
輸出の回復には力不足の面があるとし、「新興国経済の
減速の動きには注意が必要」と警戒感を示した。

一方、曽我野札幌支店長は、景気回復の持続には
設備投資のほか、所得環境のさらなる改善が重要だとし、
「物価の上昇ピッチに家計の購買力が付いてくるのか」を
今後のポイントの1つとして指摘した。