アベノミクスが変質、財政拡張を金融緩和が支える構図に=早川元日銀理事

富士通総研の早川英男エグゼクティブ・フェロー
(元日銀理事)は23日の記者向け勉強会で、
成長戦略が後退しつつある中で、アベノミクス
「3本の矢」から財政拡張を金融緩和が支える構図に
変化しているとの認識を示した。

そうした中で、日銀が国債買い入れなど追加緩和を
実施すれば、マネタイゼーション懸念が高まる
リスクがあると警告した。

早川氏は政府の成長戦略について、従来の内閣と比べて
「異次元なものはない」とし、今臨時国会における
「岩盤規制」の打破は見送られるとの見通しを示した。

一方、来年4月の消費増税による景気への悪影響を
軽減するため、政府が5兆円規模の経済対策を
打ち出したことで、「第3の矢(成長戦略)が
どんどんしぼみ、第2の矢(財政政策)が
膨らんでいる」と指摘。

アベノミクスの「3本の矢」は「財政拡張を金融緩和
(第1の矢)が支え、構造改革をスルーするものへと
変質しつつあるのではないか」と語った。

こうした中で、日銀が掲げる2%の物価安定目標の実現が
困難となり、さらなる国債の大規模購入など追加緩和に
踏み切れば、「マネタイゼーション懸念を高めるリスクが
ある」とし、足元で落ち着いている市場が再び混乱する
可能性もあると警告。

政府に対し、岩盤規制の打破とともに、異次元緩和の
前提ともなる財政の持続可能性の確保に注力するよう求めた。

デフレ脱却に向けた今後の注目点として、来年の
ベースアップ(ベア)を中心とした賃金動向をあげた。

来年4月に消費税率が現行の5%から8%に
引き上げられるが、賃金の上昇が限定的にとどまれば、
実質所得はマイナスになると指摘。

そのような状況では「さらなる物価の上昇を
国民は絶対に望まない」とし、2%を目指して
物価を押し上げていく日銀の政策自体に異論が
出る可能性があるとの認識を示した。

ただ、日銀は2年で2%の目標実現を明確に
約束しており、そうした局面では「日銀の
コミュニケーションは難しいものになる」と指摘。

半年後の日銀は「相当に複雑な
連立方程式に直面せざるを得ない」と語った。