ECB総裁が銀行破綻処理案に懸念、「複雑で資金不足の恐れ」

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は16日、ユーロ圏の
銀行破綻処理計画について、過度に複雑で資金が不十分となる
可能性があるとの懸念を示した。

EU財務相は、銀行同盟構想を予定通り進めるため、
19〜20日EU首脳会議までに破たん処理制度の
枠組みで大筋合意することを目指している。

各国は今週、閣僚及び高官による会合を連日開き、
単一清算カニズム(SRM)で合意したい考えだ。

しかしドラギECB総裁はこの日、欧州議会で「意思決定が
過度に複雑になる可能性があることや、資金手当てが
不十分な恐れがあることを懸念している」と述べ、
計画の実行可能性に懐疑的な見方を示した。

銀行破綻処理制度、とりわけ銀行の株主や債権者、
大口預金者でカバーしきれない損失を負担する
単一清算基金(SRF)をめぐっては、依然として
意見の隔たりが大きい。

SRFは銀行による毎年の資金拠出を通じて
およそ550億ユーロ規模に達する予定だが、
それまでには10年かかる見通しだ。

また、銀行同盟はリスクを共有することで
ぜい弱な国が銀行システムの問題に単独で
対処しなければならない状況を回避する狙いがあるが、
ドイツは国内の銀行や納税者が他のユーロ圏加盟国の
損失を肩代わりするリスクを最小限に抑えたい考えだ。

EUの提案にはこうしたドイツの見解が反映されている。

ドラギECB総裁は「しっかりとしたSRMを早急に
構築するよう欧州議会欧州理事会に求める」とし、
そうした制度には単一制度、単一機関、単一基金という
3つの要素が不可欠だと強調、名目上のみ単一の
SRMを創設すべきではないと訴えた。

EUの提案では、破綻銀行の閉鎖を最終決定する
過程に数日、もしくは数週間を要する可能性もある。

ドラギ総裁はこれについて、長過ぎると批判、
「こうした決定は即座に下す必要がある」と言明した。

銀行閉鎖の決定権限をめぐる意見の対立を背景に、
EUは、SRMの委員会に閉鎖決定を用意する権限を
与える一方、欧州委員会に対しては各国当局及び
ECBとの協議後、SRMの用意した決定に拒否権を
発動する権利を与える案をまとめた。

拒否権を発動した場合、欧州委はSRM委員会に
修正を指示することになるが、SRM委員会は
欧州委の拒否権に異議を申し立てることができる。

こうした長い手続きを経ている間に、閉鎖が
検討されている銀行では取り付けが発生する恐れもある。

ドラギ総裁は「監督当局が特定の銀行について
存続不可能だと判断すべき時がある」とし、
「特定の銀行が存続可能かどうか数百人で
協議すべきではない。実行可能な枠組みになるか
どうかが私にとって懸念材料だ」と述べた。

SRFが想定額に達するまでの10年間及び
その後の資金不足をどのように補うかも意見の
分かれる問題だ。

多くの当局者は欧州安定メカニズム(ESM)が
SRFに融資する案を支持しているが、ドイツは
反対の立場を崩していない。

アイルランドのヌーナン財務相はロイターの
インタビューで、欧州救済基金による補完が
あって初めて、SRFは問題に対処できる十分な
規模になるとの見方を示した。