EU長期格付けAAプラスに引き下げ、予算交渉難航リスク=S&P
格付け会社S&Pは20日、欧州連合(EU)の長期格付けを
「AAA」から「AAプラス」に引き下げた。
加盟国間の団結力が低下し、今後の
EUの予算交渉が難航するリスクを指摘した。
S&Pはここ数カ月、複数の
EU加盟国の格付けを引き下げていた。
S&Pは声明で「現在28カ国となったEU加盟国の
全般的な信頼性は低下したと見ている」とし、「EUの
予算交渉での意見対立が増えており、一部加盟国の
EUへの支持が弱まるリスクの高まりを示唆している」とした。
EU加盟国間の結束は弱体化し、一部加盟国が
将来的にEU予算拠出を拒む可能性があると指摘。
比例配分方式で割り当てられた予算を拠出し続けることに
対する一部加盟国のコミットメントに対する懸念を示した。
S&Pは声明の別の部分で英国に言及。
同国はこれまでEU予算を拠出しないとの方針を
示唆したことは一度もないが、2017年にEU離脱の
是非を問う国民投票を実施する。
S&Pは同国民投票はEU内の金融安定を
悪化させる恐れがあると指摘した。
その上で、「一部加盟国が比例配分方式での予算拠出に
躊躇すれば、『AAA』格付けを維持している加盟国の
共同の約束を達成する意思が試されることになる」とした。
S&Pは2012年1月以降、EUの格付け見通しを
「ネガティブ」とするとともに、加盟国のフランス、
イタリア、スペイン、マルタ、スロベニア、
キプロス、オランダの格付けを引き下げた。
S&Pによると、先月のオランダ格下げで、
EUに残るトリプルA格付け国は6カ国となっている。
ブリュッセルで開かれているEU首脳会議に
出席しているベルギーのディルポ首相は記者団に対し、
S&PによるEU格下げは「1つの見解に過ぎない」と述べた。
一方、イタリアのレッタ首相は、今回の決定は
欧州の経済危機がいまだ収束していないことを
示すもので、無視することはできないとの見方を示した。
欧州委員会のレーン副委員長(経済・通貨問題担当)は、
すべてのEU加盟国は金融危機の最中にあっても
割り当てられた予算を常に拠出していたと述べた。