1月の日銀会合議事要旨、新興国経済や円安反転を警戒

日銀が21日公表した議事要旨によると、1月21〜22日の
金融政策決定会合では、多くの委員らが、新興国経済や
国際金融市場の動向について引き続き注視が必要と
警戒していたことがわかった。

同会合では政策の現状維持を決定した上、再点検した
2013〜2015年度の経済見通しをほとんど変えなかったため、
直後の市場では「当面追加緩和はない」との見方も強まったが、
政策委員らの間では海外経済や消費増税などのリスクをめぐり
活発な議論がされていたことが明らかになった。

円安傾向が反転すれば物価の
上昇ペースが鈍化するなどの指摘も出ていた。

新興国について、何人かの委員は「政治情勢が
不安定な国や経常収支赤字など構造的な問題を
抱えている国では、(市場が)やや神経質な動き
となっている」と指摘した。

多くの委員は「一部の国は経常収支赤字など
構造的な問題を抱えており、国際金融市場の
動向と併せて、引き続き注視していく必要がある」
と指摘した。

海外経済全般では、米議会の歳出規模合意や
資産買い入れ縮小の開始決定で、先行きの
不確実性が低下したとして、「下振れリスクは、
欧米経済を中心として低下している」との見方で
一致した。

しかし欧州債務問題の今後の展開については、
ディスインフレ傾向が実質的な債務負担を
増加させるリスクがあり、金融システム健全化に
向けた動きには依然として不確実性が残っている」
(何人かの委員)との指摘も出た。

輸出について委員らは「引き続き勢いの弱さは
懸念材料」と指摘していたこともわかった。

何人かの委員は「円安にもかかわらず輸出が
勢いに欠けている背景として、海外各国における
設備投資が弱めに推移していることなど、
海外経済の動向が影響している」と分析した。

「一部の分野では、国内需要の強さから
輸出余力が乏しくなっているという側面もある」
(一人の委員)との指摘もあった。

また「自動車産業からの機械受注額がここ1年ほど
横ばいで推移しており、設備投資に力強さが
みられない」(一人の委員)との発言もあった。

異次元緩和の効果として、一人の委員は
「家計の株式や投資信託などの保有が拡大しており、
家計を中心としたポートフォリオ・リバランスが
着実に進んでいる」と指摘した。

消費税引き上げをめぐっては、何人かの委員が
「駆け込み重要によって1〜3月に成長率が高まり、
その反動によって4〜6月に成長率がいったん
落ち込むことは、標準シナリオに織り込まれていることを、
対外的により明確に説明する必要がある」と述べた。

一方、一「消費者コンフィデンスが昨年10月以降
弱めの動きとなっており、背景として消費税率引き上げを
意識している可能性があり、今後の動きを注視していく
必要がある」(一人の委員)との指摘もあった。

先行きの物価動向のカギである賃金の上昇率について、
一人の委員は「消費税引き上げの影響を除いたベースで
みた物価上昇率を下回る可能性もありうる」と述べた。

「海外経済に関するリスクに加え、国内の雇用・
所得環境の改善ペースも当面のリスク要因」
(一人の委員)との指摘もあった。

一人の委員は「円安が物価に与える影響がかつてに
比べ大きくなっている可能性がある」とし、「今後、
円安傾向が反転した場合には、消費者物価の前年比の
上昇ペースが想定以上に鈍化する可能性がある」
との懸念を表明した。

複数の委員は「予想物価上昇率の変化が現実の
物価上昇率の高まりにつながる点について不確実性が
高いと考えられることなどから、自身の物価見通しは
中心的な見通しに比べて慎重」との見方を示した。

一方、何人かの委員は「今後、実際の物価上昇率
前年比1%台前半で推移するもとで、現実の物価上昇に
適応する形で予想物価上昇率が上昇するメカニズムが
強まる」とも述べるなど、物価は順調に上昇する
との意見も相次いだ。

異次元緩和の継続期間をめぐって多くの委員が
「2年という期間で厳密に区切っているというわけでは
ないということを、誤解のないように明確に
説明していく必要がある」と述べた、

一方、何人かの委員は「そのことによって、2年程度の
期間を置いて、できるだけ早期に実現するという
コミットメント(必達目標)を弱めることが
ないように十分留意しなければならない」と指摘した。