失業率低下や物価上昇、賃金への影響度は近年低下=日銀リポート

日銀は今後の賃金動向を考えるための実証分析として、
失業率やインフレ率が賃金に与える影響について
推計したリポートを発表した。

その中で失業率が賃金上昇率に与える
影響度合いが近年、低下していると指摘。

インフレ率が賃金上昇率に与える影響度も
低下しているとの分析結果となっている。

「賃金版ニューケイジアン・フィリップス曲線
関する実証分析・日米比較」と題した
このリポートでは、現在の賃金上昇率
(時間当たり賃金)が、1期前のインフレ率と
現在の失業率という2つの要素で決定される
として推計。

その結果、米国と比較して、日本は失業率の低下が
賃金を押し上げる度合いが高いことが
わかったとしている。

リーマンショック前の水準まで失業率が
低下している日本では、米国よりも賃金上昇率の
押し上げにつながりやすいと日銀では見ている。

ただ、日本では、失業率と賃金の関係を示す
フィリップス曲線が近年フラット化しており、
失業率の低下が賃金上昇につながりにくく
なってきているとも指摘した。

他方、物価の影響については、米国に比べ
その役割が明確でないことも判明したと指摘する。

さらに近年において、日米両国とも物価の果たす
役割は以前に比べて小さくなりつつあると分析。

世界的にインフレ率が低位安定してきたことが
影響していると見ている。

ただ、1970年代などインフレ率が高めに
推移した時期においては、インフレ率の
動向が労働需給とは独立に、賃金上昇率に
影響を与えていたことも確認されると明言。

今後、インフレ率の動向次第では、賃金への
影響が再び強まる可能性も考えられるとの見解も示した。

足元では失業率が3.7%まで低下して
労働需給の引き締まりが健在化してきた。

消費者物価も1%を
超える上昇率を見せている。

だが、勤労者の時間当たり賃金は
なかなか上昇しにくいことが予想される。

日銀としては、過去にインフレ率が高めに
推移した時期があることから、物価上昇による
賃金への影響度合いが再び強まる可能性も
ありえると期待を滲ませている格好だ。

ただ、消費増税後に賃金の持続的な上昇が
どの程度見込めるのか、現段階では不透明な
要素が多い。

もし、賃金が期待したように上がらず、
消費税引き上げが個人消費に打撃となった場合、
景気が前向きの循環を続けられるのかわからなくなる。

2年目のアベノミクスが順調に推移するのか、
日銀のリポートからも確信は得られそうもない。