緩和効果に手応え、日本はサービス主導経済へ=黒田日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は19日午後、都内で開かれた
国際通貨研究所主催の講演会に出席し、日本経済は
内需主導で回復しつつあり今後非製造業・
サービス主導の経済に近づくとの見通しを示した。

景気・物価は2%の物価目標をめざし順調で、
異次元緩和の政策効果に手ごたえを感じている
と改めて強調した。

黒田総裁は、中国経済について成長率が
多少鈍化しても雇用状況を考えると
良好な状態が続くのではとの見解を示した。

その上で日本経済も似た状況とし、従来の
輸出主導でなく、強力な内需・非製造業主導で
景気が回復していると指摘した。

失業率もすでに3.7%まで低下しており、
3.5%と試算される自然失業率に近い
「ほぼ完全雇用状態」と指摘、「日本は
今後米国並みのサービス主導経済になる」
との見通しを示した。

黒田総裁は、消費者物価指数(CPI)が
1%台前半のプラスまで上昇したと指摘し、
異次元緩和導入から1年が経過し、「2年程度と
区切った期限の中間地点まで来たが、2%目標の
実現に向けた道筋を順調にたどっており、政策に
確かな手ごたえを感じている」と述べた。

巨額の国債買入れにより、2014年末には
資金供給量(マネタリーベース)の
名目国内総生産GDP)に対する比率が
約56%まで膨らむとし、「米国の22%や
英国の22%を遥かに凌駕する規模となる、
歴史的にも例のない金融緩和」と述べた。

日銀は2回の消費税引き上げを前提としても、
前向きの景気循環カニズムは途切れず、
基調として潜在成長率を上回る成長が続く
との従来見解を改めて繰り返した。

また「物価がだいたい2%くらい上がることを
前提に企業や家計が行動するような経済・社会を
目指している」とし、「今後、物価上昇を前提とした
賃金決定の仕組みがどのように作りあげられていくかに
注目している」とした。

また上下のリスクを点検し、必要であれば
政策の調整を行っていくとの見解を繰り返した。

司会である行天豊雄理事長による「期待を通じた
緩和の波及メカニズムは、やや曖昧で
わかりにくいのでは」との質問に対し、
黒田総裁は、金融政策を運営するに当たり、
インフレ期待は極めて重要だが、期待の
分析は難しいと述べた。

また「日銀が2%の物価目標を2年で
達成すると発表しただけで、人々の
インフレ期待が2%に向けて上昇すると
考えるほど楽観的でない」とし、インフレ期待は
実際の物価が上昇するのに伴い適合的にも上昇する
と述べた。