国債買入額の倍増、副作用が効果上回るなら妥当でない=木内日銀委員

日銀の木内登英審議委員は19日、滋賀県金融経済懇談会後の
記者会見で、経済・物価が下振れた場合の追加緩和について、
正当化されるのはよほど大きなショックが生じた場合だとし、
ハードルは高いと語った。

追加策として現在の国債買入額を倍増させることについては、
技術的には可能であり効果があるかもしれないが、副作用が
効果を上回るなら妥当ではないと述べた。

日銀が掲げる2%の物価目標に関連し、現在の
日本経済の実力に見合った物価水準は、
1%〜1%強程度との見方を示した。

昨年4月に導入した異次元緩和は大規模な
国債買入が柱になっており、日銀は保有額を
年間50兆円増加させるペースで買い続けている。

追加緩和の具体策として、その額を100兆円に
倍増する方法について見解を問われた木内委員は、
「長期国債の買い入れを2倍にすることは
技術的にはできるかもしれず、その結果として
追加の効果もあるかもしれない」としたが、
副作用が効果を上回るのであれば「妥当ではない」
と語った。

さらに現在の国債買い入れ保有残高の
増加による緩和効果を重視しており、
「(国債を)買い続けている限り、追加の
緩和効果が出ている」との認識を示した。

木内委員は午前の講演で、追加緩和を
実施した場合、副作用が効果を上回って
「経済の安定を損ねてしまうリスクを
強く意識している」と発言。

会見でも「追加緩和が正当化されるような
イベントは、よほどの大きなショックだ。
(追加緩和の)ハードルは高い」と強調した。

追加緩和を実施しても、昨年4月に
異次元緩和を導入した時のような効果を
「期待するのは難しい」とし、効果が
副作用を上回るような追加策について
「選択の余地は小さい」と述べ、改めて
否定的な考えを示した。

もっとも、金融システムに不安が生じるなどの
ケースでは、一時的に大量に資金供給を行うことは
できるとし、「そうした局面では実施すべきだ」
と語った。

木内委員は午前の講演で、2%の物価安定目標について、
将来的には2%という水準を「再検討する余地もある」
と目標見直しの可能性に言及した。

この点について会見で適正水準を問われたが、
「中長期的な物価水準は経済の実力で決定される。
望ましい物価水準は日銀ではなく、経済で決まる」
と指摘。

その上で、各種のアンケート調査や市場に
織り込まれている中長期のインフレ予想などを
踏まえて「現状では、2%は高い。概ね1%から
1%強程度が実力に見合った物価安定の状況だ」
と述べる一方、「政府の成長戦略の効果や企業、
家計の努力によって経済効率が高まれば、
水準は上がってくる」とも語った。

また、目標水準に幅を持たせるレンジの考え方を
採用することについては「物価安定目標達成の
考え方とは相容れない」との認識を示した。

4月の消費税率引き上げが景気に与える影響では
「経済の基調を変えるインパクトはない」と
しながらも、経済指標のかく乱要因と指摘。

その影響は「何年も先までの消費を前倒している
人もおり、経済が増税の影響を受けない姿を
取り戻すにはすごく時間がかかる」と述べ、
「7〜9月期の成長率を見れば、消費税後の
経済の基調がわかるというのは早過ぎる」と
影響を見極めるには相当の時間を要する
との見方を示した。

その上で、消費増税後の日本経済にとって、
増税の影響を直接的には受けない輸出の動向が
重要と強調。

同時に「残念ながら今の輸出の状況は
弱さが目立つ」と付言した。