物価2%目標、もっと早く採用なら早期にデフレ脱却も=日銀総裁

日銀の黒田東彦総裁は20日午後、都内で開かれた
日本商工会議所の総会で講演し、昨年4月に導入した
異次元緩和の推進で、デフレからの脱却をできるだけ
早期に実現すると改めて表明した。

過去の日銀の金融政策はデフレ定着防止に
十分ではなかったとし、もっと早い段階で
2%の物価安定目標を導入していれば、早期に
デフレから脱却できていた可能性があると述べた。

総裁は、日銀が掲げる物価安定目標で「なぜ2%を
目指すのか」について時間を割いて説明した。

理由として、1)消費者物価(CPI)の上方バイアスの
存在、2)景気が悪化した場合の利下げ余地の確保、
3)2%がグローバル・スタンダードである、ことを挙げた。

このうち利下げ余地の確保に関し、日本の場合は
デフレが長引く中、「先進国の中でいち早く
(利下げ余地がなくなる)ゼロ金利制約に直面」
しており、財政政策と金融政策というマクロ
経済政策の重要な柱のうち「金融政策の有効性が
大きく低下した状況が続いてきた」と指摘。

日銀は世界の中央銀行に先駆けてゼロ金利政策
量的緩和政策など「非伝統的な金融政策」を導入し、
「この15年間、景気の変動を均すことには
ある程度成果を上げた」としながらも、「デフレが
定着するのを防ぐという観点からは十分では
なかった」との考えを示した。

その上で、もっと早い段階で2%の物価安定目標を
採用していれば、「物価上昇率の低下に対して
イムリーで大胆な金融緩和を行い、早期に
デフレから脱却できていた可能性もある」と主張。

日本経済が早期にデフレから脱却し、再びデフレに
陥ることがないよう、金利操作というチャネルを
確保することの重要性を指摘した。

一方、ユーロ圏を中心に世界的に物価上昇率
低下する中、「世界的にデフレのリスクが重要な
テーマになっている」と指摘。

世界では「日本のようになるな」ということが
強く意識されているとし、ユーロ圏を中心とした
インフレ低下をめぐる最近の様々な議論が
「(物価上昇率)2%を目指すことの重要性と、
その裏返しとしてデフレに陥ることの危険性が、
強く意識されている」との見方を示した。

また総裁は、2%の物価上昇率が安定的に
持続する経済・社会では「賃金も物価も
緩やかに上がる世界が実現される」とし、
「景気が普通の状態」でも2%の物価上昇を
前提に経済活動が行われるとの考えを示した。

この点に関連し、今年の春闘で大手企業を中心に
ベースアップの動きが出ていることについて、
「2%の物価上昇率が、社会の仕組みとして
ビルトインされた、新たな社会経済システムに
移行していくステップ」と評価した。

4月の消費税率引き上げに伴う消費者物価の
押し上げは「一時的なもの」と強調したが、
実質所得へのマイナスの影響については
「消費税が租税であり政府の税収となる以上、
そうした面があるのは避け難い」と語った。

もっとも、消費増税に伴う物価押し上げは
「基調的な物価上昇とは区別して考える
必要がある」、昨年4月に導入した異次元緩和は
「所期の効果を着実に発揮」しており、日本経済は
2%の物価安定目標に向けた道筋を順調に
たどっていると改めて強調。

金融政策運営は、上下双方向のリスクを点検し、
「先行き何らかのリスクによって見通しに変化が生じ、
2%の物価安定目標の実現に必要であれば」、
躊躇なく政策調整を行う方針だと語った。