月例報告「下方修正」、日銀追加緩和へ布石の思惑否定

政府が4月の月例経済報告で基調判断を下方修正し、
波紋を呼んでいる。

追加緩和への布石ではないかとの思惑が
市場で浮上したが、複数の政府高官は
「政府と日銀の景気認識に差はない」と強調し、
市場観測に対しては「そのようなことはない」
と否定している。

政府は4月の月例経済報告で、景気の基調判断を
「緩やかな回復基調が続いているが、消費税率
引き上げに伴う駆け込み需要の反動により、
このところ弱い動きもみられる」に下方修正した。

下方修正は2012年11月以来、1年5カ月ぶり。

消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が
下方修正の背景だが、内閣府幹部によると、反動減は
「一時的」で、「緩やかな景気の回復基調は変わらない」
という。

消費増税後も景気判断を維持している
日銀に対し、一見すると、政府が弱気に見える。

しかし、政府筋は「月例経済報告が足元の動きも
きめ細かく取り入れて表現している結果で、
月例経済報告と日銀の月報の表現の仕方の違い」
と説明する。

同筋によると、月例経済報告では、消費税率
引き上げ前の駆け込み需要の強さを反映して、
2014年1月に基調判断を上方修正。

今回、その反動が個人消費や生産、住宅建設などに
出た結果、個別項目を下方修正すると同時に、
基調判断も下方修正したという。

これに対して、日銀は、昨年9月に景気認識を
「緩やかに回復している」に上方修正して以降、
今年4月まで基調判断を据え置いている。

先の政府高官は「表現に違いはあるが、政府と
日銀の間で景気認識に違いはない」とした。

また、別の政府高官は、下方修正は首相官邸
意向を受けたものかとの質問に対して「内閣府
判断だ」と答え、政府の景気認識の下方修正が
追加緩和への布石との市場の思惑に対しても
「それはない」と否定した。

消費増税の影響について、麻生太郎財務相
16日午前の衆院財務金融委員会で、
これまでのところ、予想していたより
反動減は少なかったとの認識を示した。

内閣府でも、個別のヒアリングや
週間ごとにデータを集計し検証を続けている。

それによると、4月第1週、第2週の
自動車販売は前年比2割減。

家電販売も4月第1週に同2割減と
大きく落ち込んだ後、第2週は
パソコン以外は第1週並み。

パソコンに限ってはウインドウズXPの
サポート打ち切りに伴う駆け込み需要で
持ち直しが見られたという。

飲食料品は、第1週に保存がきくものを
中心に前年比で弱い動きとなったが、
第2週に入り、戻す動きが見られるという。

売店・スーパーや家電量販店へのヒアリングでは、
反動減は各社の想定の範囲内との返答が大勢だった。

こうした結果を踏まえ、内閣府では、
現時点で反動減は「一時的」と判断している。

民間エコノミスト42人によるESPフォーキャスト調査でも、
実質成長率は4〜6月期に前期比年率マイナス4.0%に
落ち込んだ後、7〜9月期にはプラス2.3%に持ち直すと
見込まれている。

多くのエコノミストが想定する以上に反動減が
長期化すれば、政府の景気認識も一段の
下方修正を余儀なくされる。

内閣府では「引き続き注意深く
みていく」としている。