日銀総裁が2013年度CPI上振れ言及、緩和観測けん制の構図に

日銀の黒田東彦総裁が23日午前の衆院財務金融委員会で、
2013年度の消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)が
日銀の見通しを上回った可能性があると述べ、2%の
物価目標達成に向けて改めて自信を示した。

市場には追加緩和観測がくすぶっているが、
CPI上振れ時の追加緩和はないとの声も浮上。

結果として市場の緩和催促を
けん制した格好になっている。

この日の同委員会では、民主党前原誠司委員が、
日銀による2015年度のコアCPI上昇率の見通しが
前年比1.9%と、民間エコノミストの予想
(中間値1.0%)と大きくかい離している点
などについて質問した。

これに対し、黒田総裁は13年度のCPIが、
日銀の従来見通しである「0.7%より少し高めに
なっているのではないか」と表明。

「現時点で順調に2%の物価安定目標に向けて、
道筋をたどっている」と述べた。

その上で「民間見通しについて、とやかく
申し上げることはないが、昨年異次元緩和を
導入したころには、今ごろの見通しについて、
多くが0.5%程度とみていた。しかし、足元
(2月)の物価上昇率は1.3%になっている」
と指摘。

民間よりも日銀の見通しが現実に
近いとの見方をえん曲に表現した。

そして「日銀としては、民間の見通しと現時点で
違っているが、これまでのところ見通しに従って
順調に道筋をたどっている」、「順調に道筋を
たどっているので、現時点では物価目標を
安定的に継続するまで、今の金融緩和を
継続するというのに尽きる」と述べた。

2015年度に2%目標を達成できるとの日銀と、
民間予想とのかい離が大きく、いずれ日銀は
物価上昇率の鈍さを理由に、追加緩和を
決断するだろうとの見方が市場で多数を占めてきた。

しかし、民間側は物価が予想以上順調に
上がってきたため、徐々に見通しを
上方修正してきている。

2015年度見通しに関し、昨年10月時点で
0.9%だったが、直近は1.0%。

こうした民間側の見通し修正を材料に「民間と
日銀の見通しかい離を根拠に、黒田総裁が
追加緩和を検討することはない」(国際金融筋)
との声も出ている。

この日の黒田総裁の国会答弁は、そのような観測を
総裁自らが自身の見解で補強したかたちになっている
ともみえる。

世界経済は、過去20年間にわたってけん引役だった
中国の減速やウクライナ問題長期化など、日本経済の
回復を腰折れさせかねない材料も目に付く。

しかし、直近の日本経済は、4月消費増税後も
景気腰折れにつながるような価格・販売データの
明確な下落は観測されていない。

ハードデータの収集にはなお時間がかかるものの、
日銀は個人消費公共投資など内需主導による
物価上昇シナリオの実現に自信を深めている
もようだ。

このため世界経済に重大な波乱が生じない限り
「だれがみても2%達成は無理、と思われる時期まで
追加緩和の検討は先延ばしされる」(民間エコノミスト
との見方が増えつつある。

別の民間エコノミストは「完全雇用に近づき、
総裁自らCPIの上振れに言及する中で、今の強烈な
緩和効果をさらに強化するという判断を下すことは、
常識的にはありえない」と指摘する。

日銀関係者の間でも、本格的な追加緩和は、よほどの
下振れインパクトを誘発させる世界的なイベントが
発生しない限り、本格的な検討に入る可能性は相当に
下がっているのではないか、との声も出始めている。