日銀リポート、金融機関のリスク資産運用じわり

日銀は23日、金融システムの現状と展望をまとめた
「金融システムリポート」を公表した。

昨年4月の「量的・質的金融緩和」(異次元緩和)の
導入以降、金融機関は国債投資を減少させる一方、
貸出や投資信託などリスク性資産の運用を増やしており、
ポートフォリオ・リバランスが次第に進行している。

金融面の不均衡については、現時点で
見られないと指摘した。

リポートによると、日銀が異次元緩和によって
大規模な国債買入を続ける中、大手行を中心に
国債投資を圧縮する動きが継続。

それまで国債残高を増加させてきた地域銀行
信用金庫も足元の残高は横ばい圏で推移しており、
異次元緩和以降、金融機関は円金利リスクの
積み上げを慎重化させている。

この結果、金利リスク量も減少している。

金利が全年限にわたって1%上昇した場合の円債の
評価損は、2013年12月末時点で7.5兆円となり、
同6月末の7.9兆円から減少。

内訳は大手行が2.6兆円、地銀が3.0兆円、信金が1.9兆円で、
仮に景気回復を伴わずに金利が2%上昇しても、全体として
規制水準を上回る自己資本比率が維持できるとしている。

金融機関が国債投資を圧縮する一方で、貸出は前年比
2〜3%程度の増加が続いており、景気回復を背景に
足元では中小企業向けの伸びが高まるなど業種や
地域にも広がりがみられている。

海外貸出も大手行を中心に高めの伸びが継続。

株式を中心とした投資信託などリスク性資産への
投資も増加しており、日銀が異次元緩和の効果の
波及経路の1つと位置づけているポートフォリオ
リバランスがじわりと進んでいる。

こうした中でリポートでは、金融資本市場や
金融機関の行動について「過度な期待の強気化など、
金融面の不均衡を示す動きは、現時点では
観察されない」と指摘している。

株高や企業の信用力向上などを背景に金融機関の
決算は好調だが、国内の貸出利ザヤ縮小を主因に
コア業務純益は依然として低下傾向を続けている。

本業の収益力向上という課題は克服されておらず、
日銀では「中長期的には損失吸収力やリスク・テイク
余力を制約する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。