IMFが世界成長予想を下方修正、先進国に低迷リスク

国際通貨基金IMF)は24日、
「世界経済見通し」を改定した。

米国と中国の経済が軟調だったことを反映させる形で、
2014年の世界経済の成長率予想を3.4%と、4月時点から
0.3ポイント引き下げた。

2015年の予想は4.0%で据え置いた。

日本の2014年の成長率予想は1.1%で
4月から0.3ポイント上方修正した。

米国は1.7%で1.1ポイントの下方修正。

中国も7.4%と0.2ポイントの引き下げとなった。

ユーロ圏は1.1%で据え置いた。

IMFは下方修正に至った要因のうち
一時的なものは一部のみだと指摘。

特に先進国ではインフラ投資や税制の変更など
成長を加速させるような構造改革を進めない限り、
経済の停滞に直面することになると警告した。

IMFは2007年から2009年にかけての金融危機から
世界経済は完全には回復していないと強調。

中東やウクライナの紛争がもたらす地政学的リスクが
成長を下押しする可能性があるとした。

IMFは「金利が非常に低い水準で推移し、財政緊縮や
厳しい金融情勢による経済への悪影響が和らいでいるにも
かかわらず、需要の勢いに堅調さが出てこない」とし、
主要先進国政策金利を低く維持することを求めた。

米国や日本、ユーロ圏、英国の中央銀行は成長を
下支えするために、既に金利を大きく引き下げており、
経済回復が確実になるまではその状態を維持する
としている。

米国や英国の失業はエコノミストたちの予想よりも
速いペースで改善しているが、賃金上昇と消費者心理は
多くの先進国で危機前の水準を下回っている。

途上国は金融情勢が引き締まってきたことへの
対応に追われており、将来の成長予想を引き下げた。

IMFの主席エコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏は、
メキシコシティーで開かれた記者会見で、構造改革
インフラ投資を通した成長押し上げのさらなる努力を
各国に促した。

IMFは世界経済の明るい材料として、日本やドイツ、
スペイン、英国の成長加速を挙げた。

しかし、こうした明るさは年前半の
米国の成長の弱さでかき消された。

政府の貸し出し抑制策により住宅市場が冷え込んだ
中国で内需が減速したことも世界経済に影を落とした。

ロシアも世界全体の成長予想の足を引っ張った。

ウクライナ紛争に伴って制裁を受けたことなどで、
今年のロシア経済はぎりぎりプラスを維持できる
水準でしか成長しない。

ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカからなる
BRICSで、成長予想の下方修正をまぬがれたのは、
選挙後で市場心理が回復したインドだけだった。

今回の報告書でIMFは、今年初めに公表された
購買力平価の評価基準を用いて国内総生産GDP)を
算出した。

これにより世界経済は過去3年間、新興国
中心に予想されたよりも速いペースで
成長していたことが示された。

購買力平価は、市場での為替レートと異なり、
各国の通貨の実際の購買力を勘案して算出したもので、
生活水準をより正確に反映するとの見方がある。

新たな購買力平価の評価基準で計算した2015年の
成長見通しは、以前の算出値の3.9%から4%に
上方修正された。