金融政策、「出口」での慎重な戦略も必要=経済白書

政府は25日、14年度の年次
経済財政報告(経済白書)を発表した。

現状の日本経済について「デフレ脱却に向け
着実に進んでいる」との認識を示した上で、
政策課題として、持続的な賃金上昇や財政再建
加えて、金融政策にも引き続き強力な取り組みを求めた。

同時に異次元緩和の「出口」への配慮にも言及し、
金利上昇が財政に与える影響への警戒感をにじませた。

一方で、景気回復が隠れていた構造問題を
顕在化させたとして、人口減少に伴う供給制約などを
指摘、「稼ぐ力」を高めるよう提言した。

今年の白書では、まず
消費税引き上げの影響を検証。

駆け込み需要の規模を2.5兆円から3兆円程度と試算し、
1997年当時より大きめとなったが、家計負担は
社会保障給付の増加等により前回よりは小さい
と指摘している。

今後の消費回復には、雇用者報酬の着実な
増加が重要だとしている。

物価については、昨年度の「デフレから反転する兆し」から、
「デフレ脱却へ向けて着実に進んでいる」と認識を前進させた。

その上で、物価の上昇基調が
続くための課題を指摘している。

ひとつには持続的な賃金上昇、そして中長期的には
生産性の伸びが必要となるとした上で、女性や
高齢者の労働参加率が高まるなど、労働供給が
大きな転換点を迎える中で人材教育や雇用の流動性
働き方の柔軟性を高める必要があると提言。

また、現状では経済政策が景気を支えている面も
あるとして、その副作用にも留意が必要だとしている。

厳しい財政状況や対内直接投資の水準の
低さに鑑みると、海外からの安定的な
資金流入を確保するために財政健全化への
取り組みが一層重要になると指摘。

ただし、それが経済成長を下支えするためには、
税による資源配分の歪みの是正や労働供給の
拡大などに資することが重要とした。

さらに金融政策についても、デフレ脱却に
向けた強力な取り組みを引き続き求めている。

デフレリスク指数(国際通貨基金IMF=に
基づき幾つかの指標で構成)は全体として
2007年水準まで低下しているが、銀行貸出残高の
伸びなどが依然として緩やかである事が理由としている。

その一方で米国において「出口」が意識される中で
長期金利が大きく上昇した例を踏まえ、日本でも
「出口」の際には一層慎重なコニュニケーション戦略が
求められることになるとした。

白書ではまた、日本経済の構造問題にも言及。

経常収支で赤字が生じていることについて、
構造問題に対して警鐘を鳴らしていると指摘した。

ひとつには供給制約の問題を挙げ、企業の
設備投資に消極的な姿勢が続いてきたことや、
生産年齢人口の減少のために国内供給能力の
低い伸びが続いていると分析。

今後、高齢化ペースの加速から供給制約は
ますます強まる可能性があるとして、生産性向上、
働き方の見直し、国内投資の促進が求められている
としている。

もうひとつの構造的課題として、
「稼ぐ力」を高めていくことを挙げた。

家電などで比較優位が低下したほか、数量より
利益重視への企業姿勢の変化などで、円安方向でも
輸出が伸びにくくなっているなか、「稼ぐ力」は
輸出数量だけではないと指摘。

観光や金融、特許等使用料を通じたサービス輸出、
海外投資からの利子や配当、安価なエネルギー調達先の
開拓など、交易利得の改善などを通して幅広く稼げば
よいと提言している。