ECBが予想外の利下げ、ABS・カバードボンド買い入れへ

欧州中央銀行(ECB)は4日の理事会で、政策金利
過去最低水準に引き下げ、低迷するユーロ圏経済に
資金を供給する新たな措置を決めた。

ドラギ総裁は、必要なら一段の措置を
講じるとしており、追加緩和にも含みを残した。

域内景気への懸念が高まるなか、ECBは
主要政策金利のリファイナンス金利
過去最低の0.05%に引き下げた。

上限金利の限界貸出金利を0.30%に、
下限金利の中銀預金金利をマイナス0.20%に
それぞれ引き下げた。

総裁は金利について「テクニカルな調整が
これ以上は不可能な下限に到達した」とし、
利下げは打ち止めとの考えを示した。

また金利はこれ以上低下しないため、「的を絞った
長期資金供給オペ(TLTRO)」への参加を銀行は
躊躇すべきでないとのシグナルとも述べた。

利下げにより、TLTRO金利も低下するが、
融資が低迷する状況で、どの程度の効果が
期待できるかは不透明だ。

第2・四半期のユーロ圏経済成長率は横ばいで、
ウクライナ情勢が企業信頼感の大きな重荷となっている。

総裁は記者会見で「ユーロ圏の経済見通しには
下振れリスクがあると理事会は認識している」
と指摘。

「特に、景気の勢いが失われると、民間投資の
足かせとなる恐れがあり、地政学リスクの高まりが、
企業や消費者の信頼感に一段の悪影響を及ぼす
可能性がある」と述べた。

同時に公表されたECBスタッフ予想では、今年の
ユーロ圏域内総生産(GDP)見通しは0.9%増と、
6月予想の1.0%増から下方修正された。

2015年は1.6%増に加速するとした。

今年のユーロ圏インフレ率見通しは0.6%と、
6月予想の0.7%から引き下げられた。

2015年は1.1%を見込むが、ECBが目標とする
2.0%に近いが下回る水準から大きくかい離した
状態が続くという。

総裁は、インフレ率が非常に長い期間、相当な
低水準でとどまるようなら、他の「非伝統的手段」を
活用する責務について理事会は全会一致したと述べた。

総裁は、この日の利下げ決定が全会一致でなかったものの、
「安定多数」の支持を得たと明らかにした。

ドラギ総裁は、これまで使っていたインフレリスクは
「概ね均衡している」との表現は用いず、物価動向見通しに
関するリスクを「注意深く監視する」と表明した。

こうした変化から、ECB内でインフレ見通しに
関する懸念が高まっていることが伺われる。

ECBはまた、10月から資産担保証券(ABS)
及びカバードボンドを買い入れると決めた。

域内の信用状況を緩和するための措置だ。

関係筋によると、3年間で5000億ユーロ(6500億ドル)
規模に達する可能性がある。

買い入れ対象となるのは、単純かつ透明性の高い
ABS及びユーロ建てカバードボンド。

買い入れプログラムの完全な詳細は次回10月2日の
ECB理事会後に公表するとしている。

ラガルド国際通貨基金IMF)専務理事は、長期間の
低インフレによる脅威への対応を支援するとして、
決定を強く歓迎するとのコメントを発表した。

市場関係者の間では、目に見える大きな効果を出すには、
米連邦準備理事会(FRB)が実施しているような大規模な
資産買い入れが必要との見方が支配的だ。

ドラギ総裁は、量的緩和QE)について協議が
行われたと明らかにした上で、「理事会内では、
本日の決定以上の措置を望む意見と、逆にそれ以下の
措置を望む意見の両方があった。そのため本日の決定は
その中間の妥協点といえる」と説明した。

「広範な資産買い入れも協議されたし、一部メンバーは
より踏み込んだ措置を望むことを明確にした」とも
述べている。

ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッシャー所長は、
今回の決定について、ECBが成長や物価動向に関して、
従来よりも悲観的な見方を強めたことを示しているとして、
「今回の措置が最後ではないだろう」と指摘。

「ECBにはソブリン債や民間の債券買い入れなど
他の選択肢もある。ECBが今後数カ月にソブリン債
民間債券の買い入れ措置に踏み切る可能性は極めて
高いと予想する」と述べた。