日銀は2015年以降の金融政策に早くコミットすべき=OECD・玉木氏

玉木林太郎・経済協力開発機構OECD)事務次長
(元財務官)は22日、都内で講演し、日銀の
物価安定目標2%の達成について、来春は難しいと述べ、
2015年以降の金融政策について早くコミットすべきだ
との考えを示した。

2015年10月に予定される消費税率10%への
引き上げは予定通り実施すべきとの考えを強調。

景気下押し圧力に対しては短期的な財政出動
肯定したほか、日銀が金融緩和継続に早く
コミットすることが重要との認識を示した。

OECDは15日、先進国経済の見通しを下方修正。

日本の成長率予想も2014年は従来の1.2%から0.9%に、
2015年は1.3%から1.1%にそれぞれ引き下げた。

日本経済に対するOECDの政策提言として玉木氏は、
「3本の矢」の総合的な取り組みの継続のほか、
金融政策の継続、来年10月に予定される
消費税率引き上げを実施し、「財政再建
脱線させないでほしい」と指摘。

消費増税に伴う経済への下押しに対しては
「短期的な措置を導入することは構わない
というのがOECDの主張だ」と説明した。

このうち、金融政策について玉木氏は
「来春、物価安定目標を達成することは
難しい」と見通し、目標達成に向けた
金融政策について早期にコミットすべきだ
と繰り返した。

日銀は来年以降の金融緩和のペースについては
明らかにしておらず、玉木氏は「2015年以降の
金融政策ポジションについて、早くコミット
したほうがよい」と語った。

とりわけ、消費増税は予定通り実施すべき
との立場を強調し、増税による経済下押しに対して
「2015年10月を目指して今やらなければならないのは、
金融政策が2015年に入ってどうなっていくのかの
コミットを早くしてもらうことだ。金融緩和の継続に
日銀がコミットしてもらうことがよい」と語った。

追加緩和の是非については、黒田東彦日銀総裁
「必要があれば、躊躇なく」と明言していることに
尽きるとし、「状況を見ながら黒田総裁が判断する」
と述べた。

消費税再増税による景気下振れを緩和する措置として、
玉木氏は短期的な景気対策を提言する一方、「財政再建
ために財政出動があまりにも大規模になることはよくない」
と述べ、短期的であれ小幅の財政出動に含みを残した。

また、消費増税について政府は7〜9月期国内総生産
GDP)をみて最終判断する方針を明らかにしているが、
判断に際して玉木氏は「(7〜9月期GDPが)多少低めに
なっても、財政再建のペースを落としたり、やると
決めていたことを変える大きな要因には、理屈の上では
ならない」と語った。

さらに「第3・四半期の成長が落ちたから、(来年)
10月はやめて、一体いつにするのか。1年伸ばして、
また第3・四半期が良いとか悪いとかそういう話を
するのか」と述べた。

一方「マイナス成長になる可能性はない」
との見通しも示し、増税を先送りせず、
足元の問題と切りはなし、公的部門の確保に
努めるべきだと強調した。

最近の円安傾向が日本経済に与える影響については
円高にせよ円安にせよ、為替相場は経済のひとつの変数で、
為替相場が)変化することで、得をする人もいれば
損をする人もいる」と述べるにとどめた。

円安にもかかわらず輸出が伸びない状況に関しては
「輸出の最大の説明変数は、為替相場ではなく
相手国の景気だ」と指摘。

「今の円安だけでは、日本の輸出が
驚異的に伸びる余地はない」と見通した。

その上で玉木氏は「円安で日本の輸出が
ゆっくり伸びることは否定できないが、
中国や米国など日本の輸出相手国の景気が
どう回復していくかこそ、これからの輸出の
最大の変数。円安さえなれば、日本経済の
展望が明るくなるという単純な話ではない」
と見通した。