資産価格過熱の兆候ない=中曽日銀副総裁

日銀の中曽宏副総裁は25日都内で開かれた
仏ユーロプラス主催のイベントで講演し、
日銀の大規模な金融緩和により資産価格が
過熱するなどの兆候はないと強調した。

一方、大規模な国債買い入れによって市場機能が
低下しているなどの指摘に対しては、市場動向を
注視する姿勢を示した。

中曽副総裁は先進国の中央銀行による量的緩和が、
市場機能に、ときには負のインパクトを与えている
との指摘に対して「完全には同意しかねる」と反論。

「これまでのところ市場機能が深刻に
阻害されている様子はみられない」と指摘した。

「リスク資産価格の上昇やボラティリティ(変動率)の
低下といった市場の動きは、(量的緩和などの)非伝統的な
緩和策の意図するもの」だと説明。

これまでのところ「国内金融市場において、
自己実現的なサイクルで上昇するといった意味で
資産価格が過熱する兆候はない」として、バブルは
生じていないとの見方を示した。

同時に「言うまでもなく、金融市場に過熱感が
生じていないか、引き続き注意深く見ていかなければ
ならない」とも付け加えた。

昨年4月の日銀による「量的・質的緩和」導入以来、
日銀による大規模な国債買い入れで、国債市場の
機能が損なわれかねないと懸念されており、
10月末の追加緩和で「懸念は一段と高まっている
ように思われる」とも指摘した。

一方、「国債先物の取引高は量的・質的緩和導入以降、
さほど変化していない」、「日中の値幅・出来高比率も
低位で安定している」とも指摘し、「国債市場の取引は
量的・質的緩和の影響をさほど受けていないように
思われる」との見方も示した。

一方、市場機能について「楽観的になれない理由もある」とし、
「新発債の借入が困難な場合があるなど、国債市場や関連する
短期市場の機能の低下を伝えるエピソードが聞こえてくる」
と指摘。

債券市場サーベイの開始など市場との対話を拡充し、
今後はサーベイ結果を公表するとした。

「金融市場の機能への副作用を極力少ないものに
するには、市場との不断の対話が何より重要」
とも強調した。

短期市場でのマイナス金利について、「外国の投資家も、
円の金利をマイナスに押し下げる上で重要な役割を
果たしている」と説明。

今年の夏以降ドル調達コストが上昇したことで
「ドルを保有する外国投資家が、為替スワップ
通じて非常に安いコストでドルを円に転換できること」
と指摘した。

ドル調達コストの上昇の背景には、「市場参加者によれば、
ドル調達需要の高まりと、ドル供給姿勢の消極化の双方の
要因が働いている」とし、「米連邦準備制度理事会FRB)の
利上げ開始観測の下でドルの出し手の貸出態度がタイト化」、
「国際的な金融規制強化の影響」との声を指摘し、「今後も
注視が必要」と強調した。