日銀11月会合は追加緩和を概ね評価、一部委員は低金利に警戒感

日銀が25日公表した議事要旨によると、
11月18〜19日に開かれた金融政策決定会合では、
10月末に実施した追加金融緩和に関して、
多くの委員が「市場はポジティブに
反応している」と評価。

一方で、大規模な国債買い入れによる不均衡の
蓄積リスクに警鐘を鳴らす政策委員もいた。

会合期間中に安倍晋三首相が消費税再増税の延期を
表明したが、それに関する具体的な議論はうかがえない。

会合では10月末の追加緩和後の市場動向について、
多くの委員が、国債市場での長めのゾーンを中心とした
イールドカーブのフラット化、株価やJ−REIT
不動産投資信託)価格の上昇などを指摘し、
「これまでのところ市場はポジティブに
反応している」との見解を示した。

ある委員は「この間の株価や為替相場の動きは、
企業収益や米国経済などファンダメンタルズの
改善を伴っている」との見方を表明。

一方、1人の委員は追加緩和後の長期金利
低位安定は「国債市場において、日本銀行
過大な存在になっていることが背景にある」とし、
「不均衡蓄積のリスクがあるなど、必ずしも
歓迎すべきものではない」との認識を示した。

追加緩和の効果についてある委員は、2%の
物価安定目標の実現に向けて日銀が強い
コミットメントを示したことで「企業の
賃金交渉スタンスや価格設定行動などにも
好影響を与えていく」と期待感を表明。

何人かの委員が、そのためには大企業を中心に
増加基調にある企業収益が、雇用・賃金の増加や
国内での設備投資などで「家計や地域経済、
中小企業にしっかり波及していく必要がある」
との見解を示した。

安倍晋三首相は決定会合開催期間中の
11月18日に消費税再増税の延期を表明したが、
議事要旨からはこれに対する具体的な議論は
うかがえない。

個人消費について、2段階の消費税率引き上げが
想定されていた中で、「耐久消費財を中心に、
2回分の駆け込み需要とその反動が生じた
可能性」に何人かの委員が言及したほか、
足元の消費マインド慎重化の背景について
「2回目の消費税率の引き上げが広く報じられた
ことが影響した可能性」を複数の委員が指摘した、
との記述にとどまっている。

一方、10月末の追加緩和に反対した4人の
政策委員のうちの何人かが、拡大前の政策に
戻すと「日本銀行の政策運営の信認が損なわれる
おそれがある」として、拡大後の政策維持に賛成に回った。

もっとも、ある委員は、大規模な国債買い入れによる
長期金利押し下げによって「金利による財政規律維持の
カニズムが損なわれるリスクについて、これまで以上に
留意する必要がある」と指摘している。

政策委員全体でも政府に対し、財政運営に対する
信認確保と中期財政計画に沿った持続可能な
財政構造を確立するための取り組み推進に、
期待感を表明した。

この間も原油価格は下落を続けたが、会合では
多くの委員が「既往のエネルギー価格の下落が、
今後しばらく消費者物価の下押し圧力として働く」
との見方を示し、このうちの何人かの委員が
消費税率引き上げの影響を除いた消費者物価
(除く生鮮食品)の前年比上昇率が1%を割る
可能性を指摘。

複数の委員が、エネルギー価格の下落による
実質所得の増加が「個人消費には好影響を
及ぼす」と指摘した。

11月の会合では、10月末の会合で決まった
追加緩和で拡大された量的・質的金融緩和政策の
継続が賛成多数で決定された。

追加緩和に反対した委員のうち、木内登英委員が
追加前の政策が適当として今回の政策維持に反対。

景気認識は「基調的には緩やかな
回復を続けている」との判断が維持された。