IMF、2015・2016年の世界成長率予想を下方修正

国際通貨基金IMF)は20日、世界経済見通しを公表し、
2015年と2016年の世界経済成長率予想を下方修正した。

成長支援に向けた金融緩和策と
構造改革の実施を各国に求めている。

IMFは、2015年の世界成長率予想を
10月の3.8%から3.5%に引き下げた。

2016年も4%から3.7%に下方修正した。

IMFのチーフ・エコノミスト、オリバー・
ブランシャール氏は原油安や、ユーロ安、
円安など新たな要因が成長を支援しているものの、
危機時の遺産や多くの国における潜在成長率の
低下など、マイナス要因がプラス要因を
上回っている、との見方を示した。

原油安によりデフレリスクが高まっており、
実質金利の上昇を回避するため先進国は
金融緩和策を維持するべき、と指摘。

政策金利の引き下げが不可能な場合には、
他の措置による金融緩和を行うことが
望ましいとの見方を示した。

大半の国の見通しが下方修正されるなか、
米国の2015年の成長率予想は3.1%から
3.6%に引き上げられた。

新興国では、石油輸出国であるロシア、
ナイジェリア、サウジアラビア
成長率予想の引き下げが目立った。

ブランシャール氏は石油輸出国機構OPEC)の
減産見送り決定が世界的な原油安の主因だとし、
こうした姿勢は変わらないだろうと指摘した。

また、価格下落が続くとの見通しを示した上で、
「ある程度持ち直すが、6カ月前の水準には
戻らない」と述べた。

中国の成長率予想は7.1%から
6.8%に修正された。

IMFは、中国経済が減速しても、当局は信用と
投資の急拡大を警戒し、その結果、政策対応は
限定的になる、との見方を示した。

ブランシャール氏は2015年に見込まれる
中国の景気減速について、「一部にみられる
不均衡に対処し、経済の軸足を不動産や
シャドーバンキングから消費に移す同国政府の
決断を反映している」と述べた。

IMFはブラジルやインドの
成長見通しも引き下げている。

IMFは、原油安で新興国中央銀行
利上げを遅らせることができるものの、
成長を支援するためのマクロ政策上の
余地は引き続き限られていると指摘。

また、価格下落はエネルギーの助成金
税制を見直すチャンスだとしている。

今回の世界経済見通しは、先週IMF
ラガルド専務理事が示した見解とほぼ一致する。

同専務理事は、原油安や米経済の回復に関わらず、
今年の世界経済見通しはさえないとの見方を示した。

ラガルド専務理事はまた、ユーロ圏と日本には
低成長と低インフレの期間が長引くリスクが
引き続き存在し、欧州ではデフレリスクが
払しょくされていないと指摘。

中国の減速などで新興市場国の
成長も減速するとの見通しを示した。

ラガルド専務理事とこの日公表された
世界経済見通しはともに、米金融引き締めに
伴う米国への資金流入新興国の金融市場の
急変動につながる可能性がある、との見方を
示した。