ECBが量的緩和決定、景気支援・デフレ回避へ1兆ユーロの支援策

欧州中央銀行(ECB)は22日、国債買い入れ型の
量的緩和QE)実施を決定した。

買い入れは月額600億ユーロのペースで
3月に開始、2016年9月末まで継続する。

景気支援とデフレ回避に向け、残された
最後の主要金融政策の実施に踏み込む。

買い入れ額には既存のプログラムも含まれる。

民間資産の買い入れと銀行への数千億ユーロの
低利融資に加え、国債買い入れを実施するとした。

来年9月までに1兆ユーロ以上の
資金が供給される見通しだ。

ドラギ総裁は記者会見で「この拡大プログラムの下、
公的、及び民間部門の証券の買い入れは、合計して
月額600億ユーロとなる」と表明。

「買い入れは2016年9月末まで実施されることが
意図されており、インフレ動向の持続的調整が
確認できるまで継続される」と述べた。

国債買い入れは、各国中銀の
ECBへの出資割合に応じて行われる。

ドイツのような経済規模の大きい国の方が
アイルランドなど小規模な国より国債
買い入れ額が大きくなる。

金融市場はECBの決定を好感。

欧州株は7年ぶりの高値をつけたほか、
ユーロ圏国債は軒並み利回りが過去最低を更新。

ユーロは対ドルで11年ぶり安値をつけた。

理事会前からECBが大胆な追加緩和に
乗り出すとの観測は根強かった。

スイス中銀はフランの対ユーロ相場上限の
撤廃に踏み切ったほか、ユーロペッグ制を
導入するデンマーク中銀は、QE決定の発表後、
今週2度目となる追加利下げを実施した。

この点についてはユーロ圏の結束の原則に反し、
高水準の債務を抱える国の財政をさらに圧迫する
可能性があるとの批判が上がっている。

ドラギ総裁は、国債買い入れは法的に
問題ないとの意見で理事会は一致したと指摘。

即時発動の必要性を認める声が「採決の
必要がなかったほど」大多数を占めたと述べた。

その上で「20%はリスク共有、80%はリスクを
共有しないベースで行うことでコンセンサスが
あった」と語った。

銀行筋によると、ドイツ、オランダ、オーストリア
エストニアの中銀総裁とラウテンシュレーガー専務理事の
計5人が資産買い入れに反対した。

ただ、ユーロ圏の国債利回りは総じて過去最低水準にあり、
ユーロもすでに対ドルで急落している。

借り入れコストの低下と通貨安はともに成長を
支援するが、いずれも一段の下げ余地が
どの程度あるのか疑問が残る。

ドラギ総裁はECBに「プランB」はあるかと問われ、
「われわれは『プランA』を提示した。『プランA』が
あるだけだ」と答えた。

またECBは成長の基盤を創造することはできるが、
「成長加速には構造改革が必要。今度は政府が
構造改革を実行する番だ。改革への取り組みが
大きいほど、金融政策の効果も高まる」と
政府をけん制した。

国債買い入れでは、ギリシャキプロスなど
欧州連合EU)/国際通貨基金IMF)の
支援プログラムを受けている国の国債
対象となるが、「新たな要件が追加される」
としており、より厳しい条件が適用される。

実際には、ギリシャ国債
当面買い入れの対象とならない。

1国が発行した国債の買い入れは33%までという
上限が設定されており、ECBと他のユーロ圏中銀は
この水準以上のギリシャ国債を既に保有しているためだ。

ただ、今後ギリシャ国債が償還されれば保有率が
33%以下になり、買い入れが可能になる。

ECBはまた、主要政策金利である
ファイナンス金利を0.05%に据え置くことを決定。

上限金利の限界貸出金利も0.30%に、下限金利
中銀預金金利もマイナス0.20%に据え置いた。