米FOMCが景気判断を上方修正、利上げに「忍耐強い」姿勢維持

米連邦準備理事会(FRB)は、27〜28日に開催した
連邦公開市場委員会FOMC)後に発表した声明で、
「力強い雇用の増加」とともに「経済活動は
しっかりした(ぺースで拡大している」との認識を
表明し、景気判断を上方修正した。

年内利上げに向けた軌道上にある
というシグナルをあらためて送った。

利上げ決定に「忍耐強くいられる」と改めて
表明する一方、一部のインフレ指標が
低下していることも認めた。

FRBは米経済の先行きに強気の認識を示したほか、
エネルギーを起因とするインフレの弱さは
いずれ解消されるとの見方を維持した。

FRBは今回の声明で、欧州やアジアの
景気減速については概ね言及を避け、
利上げ時期を決定するにあたっては
「金融動向や国際情勢」を考慮するとした。

世界の市場について言及するのは
2013年1月以来初めてだ。

声明は「経済活動はしっかりしたぺースで
拡大している」と指摘。

前回声明の「緩やかなペースで拡大」
から上方修正した。

労働市場の状況についても「力強い雇用の
増加と失業率の低下を伴って、さらに改善した」
と指摘した。

市場では、今回の声明文のなかに「国際情勢」への
言及があったことや、FRBがインフレの弱さを
認めたことが一部で意識され、米長期債の利回りは
低下した。

ドルは、通貨バスケットに対して上昇した。

FRBと他の主要中銀の政策かい離が、ドルが
数年ぶりの高水準に上昇する要因となっている。

ドル高は米国の輸出やインフレにマイナスの影響を
及ぼすため、FRBにとって懸念材料になる可能性がある。

FRB当局者の多くは、今年半ば付近に利上げする
可能性を指摘しているが、今回の声明では「委員会は
金融政策の運営姿勢の正常化開始において忍耐強く
いられるとの文言が踏襲され、利上げの時期はあくまでも
「オープン」であることが強調された。

物価については、インフレはFRBが目標とする
2%を一段と下回る水準に低下したとの認識を表明。

さらに「将来のインフレを示す市場ベースの指標は
ここ数カ月で大幅に低下した」との見方を示しており、
前回12月声明から認識を後退させた。

一方で、今回の声明では「インフレ率は中期的に
徐々に2%に向かって上昇すると予測する」との
文言も盛り込まれ、今後のインフレの見通しに
ついて「期間」が明示された。

FRB当局者は、インフレ率が低水準に
とどまっていることについて、経済成長と
雇用増を背景に物価は最終的には上昇に
向かうと主張。

たとえインフレ率が低いままでも、利上げを
開始する可能性があると指摘している。

また、利上げ開始後のペースについても、長い時間を
かけた緩やかなプロセスになり、金利は正常な水準を
大幅に下回る水準にとどまるため、投資や消費を
阻害しないとの見方を示している。

FRBは前回12月のFOMC声明で、事実上の
ゼロ金利を「相当な期間」維持するとしていた
文言を修正し、利上げ決定には「忍耐強い」
アプローチが必要との表現を採用。

イエレン議長はその際、「忍耐強い」とは少なくとも
2回のFOMC会合を意味すると明言していた。

つまり、今月と3月の利上げはないということになり、
投資家はいつ「忍耐強い」の文言が消えるのかを
注視している。

イエレン議長は、利上げは経済指標次第だとしているが、
議長会見も予定されている6月のFOMCが、もっとも
早い利上げのタイミングと見られている。

12月の声明では、「忍耐強い」アプローチについて、
事実上のゼロ金利を「相当な期間」維持することが
適切としたそれまでの声明と矛盾しない、と説明していた。

ただし今回の声明では、以前の
ガイダンスに関する言及は削除された。

今回のFOMCから、アトランタ地区連銀のロックハート総裁、
シカゴ地区連銀のエバンズ総裁、リッチモンド地区連銀の
ラッカー総裁、サンフランシスコ地区連銀の
ウィリアムズ総裁が投票権を得た。

新メンバーは、ラッカー総裁以外は
概ねハト派的な姿勢で知られている。

今回の声明に対して反対票を投じた
メンバーはおらず、全会一致で決定された。

議長が新陣容でコンセンサスを
形成できたことになる。