物価プラス達成でゼロ金利に浮揚効果=木内日銀委員

日銀の木内登英審議委員は5日、前橋市での
記者会見において、過去2年間の「量的・質的金融緩和
(QQE)」政策の結果、物価のプラス基調が定着してきたため、
政策金利をゼロに据え置くことで景気浮揚効果が生じるように
なったと指摘した。

さらに国債などの資産買い入れのペースを減らす一方で、
当座預金の付利引き下げ導入を提唱した。

木内委員は、デフレ状態では名目金利がゼロでも
実質金利はプラスにとどまるが、QQEの結果
「物価が目標の2%には遠いもののプラス基調に転じ、
ゼロ金利政策の景気浮揚効果が出てきた」と指摘。

資産買い入れは、金額を急激に減らすと金融市場に
影響が大きいため、政策の微調整には不向きだとし、
金利が望ましいと説明。

中長期的に2%の物価目標を目指すには「微調整に
なじまない資産買い入れの比率を低め、金利政策への
シフトもあり得る」との見解を示した。

木内委員は昨年10月の追加緩和に反対し、その後も
追加緩和前の政策に戻すことを提案している。

QQEの導入当初は「効果が副作用を上回るとみて
賛成したが、効果は徐々に低減する一方、副作用は
減らない」と述べ、「追加緩和により副作用の比率が
高まるタイミングが早まると判断した」と説明した。

QQEの政策効果の源泉は、インフレ期待の引き上げと、
名目金利の引き下げによる実質金利の引き下げだと説明。

このため「名目金利の下げ余地が小さくなり、世界的に
インフレ期待は高まりにくい現状では、実質金利
低下余地が少ない」と分析した。

QQEによる巨額の国債買い入れで「現時点で非常に
大きな副作用はないが、将来副作用が表面化する
可能性があり、表面化してからでは手遅れ」と警戒した。

特に「経済実体で決まるべき水準よりも金利が低いと、
何らかの事件・イベントで金利が大きく急上昇し、
住宅ローン金利が上がったり、為替が急激な円高
巻き戻される可能性がある」と語った。

また「多くの金融資産のベースとなる国債価格がゆがむと
バブルにつながり、巻き戻しが起こるとバブル崩壊という形で、
われわれの生活に大きな影響がある」と警告した。

もっともこれまでのQQEの成果として「金融政策の
限界点が認識されるようになった」と指摘。

需給ギャップ縮小に成果があったが、さらに経済成長を
高めるには高齢化・人手不足による供給面の問題を解決し、
潜在成長力を引き上げる必要があると強調した。

原油価格の下落により、日銀が政策の目安とする
消費者物価指数(生鮮食品除く、コアCPI)は
今後ゼロもしくはマイナスに転じる可能性があるが、
「企業や家計の物価観には影響はない」と述べた。

中国経済について、潜在成長率が低下しつつあり、
中国経済の高成長を前提としてきた日本や
アジア周辺国にも影響があると分析。

設備過剰と不動産調整で「中国にもデフレの
リスクが出ており、日本を含む世界に
ディスインフレ的影響を長く及ぼす可能性が
ある」と警戒した。