円安でも製造業心理は慎重、非製造業に原油安の恩恵=3月の日銀短観

日銀が1日発表した3月全国企業短期経済観測調査
(短観)では、大企業製造業の業況判断DIがプラス12と
前回調査から横ばいにとどまり、円安による輸出・
収益増にもかかわらず、企業の慎重姿勢がうかがえる
内容となった。

一方、大企業非製造業はプラス19に改善。

原油安に伴うコスト低下が円安による
コスト増の影響を上回った可能性がある。

2015年度の設備投資計画は大企業全産業で
前年比1.2%減と小幅のマイナス見通しでの
スタートとなった。

円安進行による輸出や収益の拡大を背景に
景況感改善を予想する調査機関が多かったが、
前回の昨年12月調査とDIの水準に変化は
みられなかった。

業種別に見ても、特に円安の恩恵が大きいと
みられている自動車や電気機械などが横ばいに
とどまった。

大企業製造業の売上計画を見ても2015年度の
輸出は、前年比1.6%増が見込まれているものの、
中国向け輸出の鈍化や国内販売の低迷などが
企業の見方を慎重にしている可能性がある。

輸出・収益増も円安という外生要因の面があり、
業況判断DIの先行きもプラス10と悪化が
見込まれている。

もっとも、2015年度の想定為替レートは
1ドル111.81円で、足元の同120円程度に
比べて保守的。収益は上振れ余地がありそうだ。

大企業非製造業は2期連続で改善。

円安進行によるコスト増を背景に事前予想では
プラス16と小幅の悪化が見込まれていたが、
結果はこれを上回った。

需要好調で不動産がプラス33と11ポイント
改善したほか、外国人旅行客の消費増もあり、
小売がプラス5と4期ぶりに改善。

原油価格下落によるコスト低下などで電気・ガスが
3期連続で改善するなど、全体でも原油安の影響が
円安の影響を上回っているとみられる。

一方、景況感の先行きはプラス17と
2期連続で悪化予想となっている。

中小企業は製造業がプラス1となり、
前回から3ポイント悪化した。

先行きはゼロと2期連続で
悪化が予想されている。

非製造業はプラス3と2ポイント改善。

改善は4四半期ぶり。

先行きはマイナス1と7期連続の
悪化予想となっている。

2015年度の事業計画は、全規模全産業ベースで
売上高・経常利益ともに同0.6%増と小幅の
増収・増益が見込まれている。

円安による輸出・収益の改善や原油価格の下落による
コスト低下を反映したものとみられる。

一方、設備投資は大企業製造業が同5.0%増、
非製造業が同4.1%減となり、大企業全産業ベースでは
同1.2%減となった。

過去の平均と比べて製造業が強め、非製造業が
弱めのスタートになることが見込まれているが、
日銀では全体として「水準感は悪くない。過去と
比べても違和感はない」(調査統計局)とみている。

これまでの設備投資動向をみても「耐震など安全対策や
維持・更新の上積み、能力増強投資も散見されている」
(同)という。

雇用は引き続き、ひっ迫した状況が続いている。

雇用人員判断DI(過剰─不足)は全規模全産業で
マイナス17と人手不足感が拡大。

規模・産業別にみてもすべてが
不足超方向の動きになっている。

水準としては、大企業が2008年のリーマンショック前、
中小企業は1990年代前半まで遡る逼迫状態となる。