金融機関の行動積極化でも不均衡みられず、金利リスク高水準=日銀「金融システムリポート」

日銀は22日、金融システムの現状と展望をまとめた
「金融システムリポート」を公表し、日銀による
量的・質的金融緩和(QQE)の推進や景気の
回復基調を背景に金融機関のリスクテーク姿勢が
強まっているが、現段階でバブル発生など金融面の
不均衡はみられていない、との判断を示した。

もっとも、海外資産の拡大や高水準にある金利リスクなど、
リスク管理の強化を改めて促している。

リポートでは、昨年10月の前回調査時よりも、
金融機関の内外貸出や有価証券投資において
リスクをとる姿勢が強まっているとの見解を示した。

具体的には国内貸出が前年比で2%超の
増加基調にあるほか、大手行を中心に海外向けの
貸出残高が高い伸びを続けており、「金融機関は、
積極的な融資姿勢を維持している」とした。

有価証券投資についても、日銀が大規模に国債
買い入れるQQE開始以降は金融機関全体として
円債残高が逓減する一方、外債や投資信託など
リスク性資産へのシフトが徐々に拡大。

QQE導入前の2012年12月から2014年12月までの
2年間で国債は34兆円減少したが、内外貸出と
国債以外の有価証券は合計で67兆円増加しており、
日銀では「ポートフォリオ・リバランスが相応に
進んでいる」(金融機構局)と評価している。

金融機関がリスクテーク姿勢を強める中で、金融環境に
変化が生じた場合の経営への影響が懸念されるが、
内外長期金利が2%程度上昇するとともに、円高
株安による景気悪化が生じるケースでも「自己資本比率
大きく低下するが、規制水準を上回る状態が維持される」と試算。

全体として金融機関は「ショックに対して、相応に
強いストレス耐性を有している」とした。

もっとも、同様のケースでは収益が赤字になる
金融機関が多くみられるほか、有価証券に相応の
規模の評価損が生じることから、「リスクテーク姿勢に
影響する可能性がある点には留意が必要」と指摘している。

金利リスクについては、国債残高の削減などに伴って
2013年3月末のピーク時に比べれば減少しているが、
「引き続きかなり高めの水準」とみている。

金利が全年限にわたって1%上昇した場合の
債券評価損は、2014年12月末時点で大手行が
2.7兆円、地域銀行が2.8兆円、信用金庫が
2.0兆円の計7.5兆円と試算。

同6月末の7.3兆円から増加しており、期間収益確保を
狙った投資によって足元の金利リスクは再び増加しつつある。

また、リポートでは金融活動における過熱感の程度を
色分けで示した「金融活動指標」を掲載している。

今回は14の指標のうち「不動産実物投資の対GDP比率」が
「過熱」を示す「赤」に変化した。

日銀では、もう1つの不動産関連指標である
「不動産業向け貸出の対GDP比率」に過熱感が
みられないことなどから「不動産市場に過熱感は
みられていない」と判断しているが、今後の
不動産市場動向を注視していくことになりそうだ。